☆小説☆ D(完) 「高野さーん」 ゴミ出しから帰り、 傘に付いた滴をパッと払って、 玄関から呼びかける。 「雨降っちゃったので、荷物移すの明日にしますね?」 傘立てに傘を入れて、上がる。 積み上がったダンボール箱を眺めていた高野さんが、 俺に目を向けて優しく微笑んだ。 「もう全部詰めちまったのに」 「俺もですよ」 じゃあ、今夜はホテル泊まるか……と呟きが聞こえた。 少し、身の危険を感じるのは、気のせいだろうか。 「高野さん、あの傘は……?」 俺は玄関の傘立てを指差す。 俺のさしてきた黒い傘の隣に、古びたビニール傘。 「あぁ」 高野さんが笑う。 「数年前に、見知らぬ人から貰ったんだ」 「ふーん」 「なんか、捨てるに捨てられなくてさ」 もう骨組みも折れてて、使えないんだけど、と言う。 「冷たい世の中で、傘を差し出してくれる暖かさに触れて、ちょっと幸せになれたんだ」 でも、と高野さんが続ける。 「もう捨てる。今、すげー幸せだから」 「……」 「律と一緒に過ごせる。ずっと一緒に」 そう言われると、なんだか恥ずかしくなってきた。 そういえば、俺が傘をあげたあの人はどうしているだろう。 あれも、ちょうど数年前になるかな? きっとあの時、俺とあの人は同じような気分だったろう。 幸せだといいな。 俺は今、好きな人に好きだと伝えられて、 一緒にいられて幸せだから。 「飯食いに行くか?」 愛しい恋人の呼びかけに、元気よく返事をする。 「はい!」 傘は、一本でいい。 END ――――――――――― んー……シリアス? やっぱりシリアス向いてませんわ(笑) 私、雨は嫌いですけど、傘は好きです(・v・) カラフルで、気分が晴れます! なんだか矛盾してるけどw [*前へ] [戻る] |