☆小説☆ B ずぶ濡れで家に帰ると、出迎えてくれるのは、全く片付かない部屋。 髪を拭くためのタオルすら見当たらない。 「引っ越そうかな……」 たくさん集めた本も、 本当に必要なものだけ残して売ってしまおう。 足元に散乱した本の一冊を拾い上げる。 ひらりと何か落ちた。 拾い上げてみて、手が震えた。 見覚えのある便箋。 本に挟んであったみたいだ。 遥か昔の淡い思い出。 “今日、図書館行くの遅れる” たった一行。 宛先は確か、俺の靴箱。 差出人は………先輩。 俺は便箋を本に挟み直し、抱きしめた。 ただ、ひたすらに、 昔、恋した誰かのことを考えながら。 [*前へ][次へ#] [戻る] |