☆小説☆ B 出社すると、部署の入り口あたりに女の子たちが集まっていた。 女の子の手には見覚えのあるリボン。 輪の中心にいるのは高野さん。 ちょっと微笑んじゃったりして。 あの顔で笑いかけられたら、 女の子たちがときめかないわけがない。 「すみません、通ります」 俺は気持ちが顔に出ないよう、 唇を引き締めて、輪の横を通る。 「おい、上司に挨拶もなしかよ?」 「………おはよーございます!」 これでいいんでしょ? 高野さんは納得いかなさそうな顔で 俺を見ていた。 「なんか怒ってるだろ?」 休憩時間、コーヒーを片手に高野さんが声をかけてきた。 「いいえ別に」 「怒ってる」 「自意識過剰もほどほどにしてください」 俺は目を合わせない。 高野さんは、なるほど、と笑った。 「やきもちだな?」 「は、はあ!?」 「俺が女の子たちにリボンあげてたから」 意味が分からない。 俺が怒る理由にならないじゃないか。 あれ? 俺は怒ってるのか? 高野さんに? なぜ? どうして? このイライラはなに? 第一、女の子に渡せばいいって言ったのは俺で。 俺のカバンにも入っているのだ。 結局捨てられなかったリボン。 高野さんがくれた黄緑色のリボン。 俺の目と同じ色。 「そ、そろそろ仕事し始めます……」 高野さんと居たくなくて、俺は席を立った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |