☆小説☆ A 結局受け取ってしまったリボン。 さっさと捨てればいいものを、捨てられずに部屋の机の上に置いてある。 こんな女物が似合うわけないのに。 そっと手にとって髪にさしてみる。 10年前の気持ちに戻れたら、どんなにいいだろう。 高野さんが好きって言ってくれて、 俺も高野さんを好きで。 幸せ、だと思う。 でも、無理なんだ。 あの日から10年も経った今、 俺はあの頃の俺じゃない。 そんなことを考えながら、 俺は目を閉じた。 「あ………」 やってしまった。 夕食も食べず、風呂にも入らず、 床で一夜を明かした。 今日は休みだからいいけど…。 固い床で寝たせいで、 疲れはとれていない。 むしろ節々が痛い。 顔を洗おう。 鏡を覗き込んで、ギョッとする。 髪にリボンをつけたまま。 「何してるんだ俺……」 リボンをぎゅっと握る。 捨てよう。 要らないんだから。 捨てちゃえばいい。 “お前の目と同じ色。よく似合う” 知らない。 高野さんの言ったことなんて関係ない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |