☆小説☆ @ 「小野寺!大変だ」 朝っぱらからウルサイ。 この声は高野さんだ。 ちょっと違和感があるけど。 俺は頭の寝癖もそのままに、何度も叩かれるドアをそっと開けた。 「朝から近所迷惑ですよ!それからドアを叩かないでインターホンを鳴らし―――」 いつも高野さんの顔のある辺りを睨んで喚きたてたのだが、俺の視線は空を切っていて。 視線をそのまま下へずらすと。 「嵯峨、先輩………」 10年前の、あの人がいた。 「高野さん、ですよね?」 「そうだ」 「背、縮んだんですか?」 「ちょっと違う」 とりあえず、高野さんの部屋に入り、話しを進める。 俺は未だに、目の前の光景が受け入れきれていない。 10年前の高野さんが……嵯峨先輩がここにいる。 初恋の人。 図書館で本を読む横顔。 「……ぁ」 目が合って、不覚にもどきりとした。 「お前って本当に『嵯峨先輩』が好きだな」 「す、好きじゃないですよ!何年前の話してるんですか」 「10年前の俺が今ここにいるけど?」 そうだ、その話をしていたんじゃないか。 「話を戻しますけど、何が起こってるんですか?」 「えーとだなぁ。つまり、簡潔に言うと10歳分くらい若返った」 [次へ#] [戻る] |