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田夏  SS 短編 
ちっちゃな炎(夏目SIDE)
あれ?タキと田沼?何、話してるのかな?

昼休み。日当たりのいい校庭のベンチで談笑する二人を見掛けた。
声を掛けようを思ったのだけど、あまりにも楽しげな二人になんだか近寄りがたくて、そのまま素通りする事にした。

「あ、夏目くん。」
「夏目。」
二人がこちらに気付いて、同時に声を掛けてきた。でも俺は、
「悪い。西村たち、待たせてるんだ。」
嘘をついてその場を離れた。

胸の辺りがチリチリする。――わかっている。これは『嫉妬』だ。
タキ相手にヤキモチ妬くなんて、本当にどうかしている。でも、感情は止められない。早く頭を冷やさないと…。
――顔でも洗って来よう。


放課後。いつものように田沼と帰る。ひと気のない道にさしかかると、いつも田沼は手を繋いでくる。
少し筋張った大きな手。この手が触れるだけで、いつも胸がきゅうっとなる。
「…昼休み、タキと何話してたんだ?凄く楽しげだったけど…」
言うなっ、俺。でも、口が勝手に動く。モヤモヤして止まらない。女々しくて、我ながら嫌になる。
「…ああ。夏目の事だよ。それ以外、話したい事なんてないし。」
だから楽しかったんだとでも言いたげに、当然と言わんばかりに、田沼はさらりと言う。
その一言で、俺のチリチリもモヤモヤも、どこかへ吹き飛んでしまった。
(ゲンキン過ぎるだろ、俺……)
この恋人は、いつでも一番欲しい言葉をくれるのだ。


「……妬いてただろ?夏目。」
ニッと笑って田沼が言った。もうとっくにそれもお見通しだったか。
「…ごめん。態度わるかったよ……うわっ!」
「な」と続く言葉は制服の胸に吸い込まれた。――抱き締められる。ぎゅうぎゅうに抱き締められる。苦しい。ちょっと力を緩めてくれ。
「タキには申し訳ないけど……俺は今、凄く嬉しい。もの凄く嬉しい。」
そう言って田沼は俺のこめかみにチュッとキスをした。…ああ。ホントに駄目だ、俺。もう末期だな。脳みそまで蕩けそうだ。


――ああ、タキ。ほんとにすまん。お詫びに今度ニャンコ先生を一晩、貸し出すよ。それでかんべんな?

ニャンコ先生が聞いたら怒り出しそうな事を勝手に決めて、俺は田沼の胸に頬を摺り寄せた。










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