知らない雨に焦がれる。
海水浴
「大丈夫!!かわいいですよ。」
「そうだよ!ね、いこっ。」
美人さん二人に言われてもフォローになりませんよ。
そう呟く間もなく、鈴乃は京子とハルにそれぞれ片手を引かれ、ずるずると引きずられるように足を進めた。
ここ、並盛海岸に来たのはライフセイバーのバイトをしている京子の兄の了平に誘われたからだった。
ビキニ姿の二人はかわいくて、注がれる視線や交わされる言葉に気付いていないのか、満面の笑みで歩を進めていく。
真ん中でパーカーを着込んだ鈴乃だけがそれらに気づき、俯き加減に歩む。
「おまたせー」
「着替えてきましたよ!」
京子とハルは待っていた綱吉たちに声をかける。
鈴乃はコソコソと綱吉の側に回り、口を開く。
「デレデレしちゃって。
お兄ちゃんのばーか。変態。」
「んな、スズ!?」
顔を赤くした綱吉が大げさに飛び退く。
「スズは水着姿じゃないのなー。」
「わ、武くん!」
「オレ楽しみにしてたのに。」
不満げに口を尖らせる山本のセリフに鈴乃は少し頬を染める。
「だ、だって、こんな美人さんと男前に囲まれたら私なんか悪目立ちしちゃうもん。」
「んなことないって。
スズ、かわいいぜ。」
無意識なのか、顔を近付けて囁く山本を鈴乃から引き離したのは了平の大きな声だった。
そして、了平と共に現れたライフセイバーの先輩というのは、小さな少年にゴミ捨てを命じる最低な人たちだった。
先輩たちは、もともと女性をひっかける気でいたのか、京子とハルを強引に連れて行こうとした。
それを止めたのは山本と獄寺だった。
「てめーらの仕事をするスジはねぇぞ。」
ガンを飛ばす獄寺を了平も援護するが、先輩に上手く丸め込まれた。
全員がこの場で了平は役に立たないと判断した瞬間だった。
京子もハルも誘いを断ると、綱吉に絡み始めた先輩。そのことで獄寺がケンカをうると、先輩たちはいっちょ前にライフセイバーの自覚があるのか、三対三のスイム勝負を提案した。
*****
第一泳者は山本。
「気をつけてね。」
「おぅ、勝ってくるからな。」
不安そうに見つめる鈴乃に山本は笑顔で返す。
審判の了平の合図に両者は勢いよく駆け出す。序盤は少し遅れをとったものの、山本は持ち前の運動神経で追い抜く。そのまま折り返し地点の島の陰へ二人は姿を消したが、先輩が姿を見せても山本は一向に現れない。
そうこうするうちに先輩は戻ってきたため、第二泳者へ試合が移る。
第二泳者の獄寺も了平の合図でスタートを切る。ほぼ互角で進むものの、やはり島の陰からは出て来ない。
姿が見えぬうちに第二泳者の先輩も戻ってきて、第三泳者の綱吉の番になった。
明らかな劣勢な綱吉だが何かに気付き、泳ぎを止める。
視線の先には、溺れている女の子。
綱吉は方向転換して少女へ向かうも、辿り着いた所で体力が尽きたのか、どんどん体が沈んでゆく。
そこに現れたのはぷかぷか浮き輪で浮かぶ
リボーン。溺れかけの綱吉に死ぬ気弾を撃ち込む。
その頃陸地では、山本と獄寺が戻ってきていた。
やはり、先輩達は仕組んでいたらしい。襲ってきた人たちを返り討ちにして帰ってきたようだ。
山本も獄寺も無傷そうで鈴乃は息をつく。
綱吉も手柄を横取りしようとした先輩に拳を一発叩き込み戻ってきた。
しかし、改めて少女と会った時、少女が
「助けてくれたのはもっと鬼みたいな顔したお兄ちゃんだった」
と発言したため、綱吉は少女を助けたと信じてもらえなかった。
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