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知らない雨に焦がれる。
再会

早朝。沢田家は静まり返っている。
鈴乃は動きやすい服に着替え、こっそりと部屋を出る。
もしかすると、リボーンやビアンキは起きてしまったかもしれないが何も言ってこないので大丈夫だろう。
自己完結して履き慣れたスポーツシューズを履いて家を出た。
沢田家は住宅地の中にある。見上げたらビルが多くなった、とか古家が無くなって新しく家が建った、とかはあるが大きな変化はなく基本的に低学年の頃に自転車を飛ばして回ったそのままだった。
記憶を掘り起こしながら気の向くままに走る。
キョロキョロとせわしなく視線を動かしながら角を曲がったとき、何かに弾き飛ばされた。
尻餅をついたがすぐに目の前に手が差し出された。

「悪ぃ、大丈夫か?」

鈴乃腕を辿って差し出された手の持ち主の顔を見上げた。
ぶつかった少年は爽やかな笑みを浮かべたまま目の前の少女に手を差し出している。

「あ、の………」

少年はキョトンとした顔をした。
鈴乃は鈴乃で、よく知っている顔に驚いていた。

「武、くん?」

少年、山本は一瞬驚いたようだが、すぐに満面の笑みに変わった。

「もしかしてスズか?」

そうだよ、と鈴乃が肯定する間もなく山本は鈴乃の腕を掴み立たせた。

「会いたかったぜ、スズ!!
最後会えなかったからな。」

鈴乃がイタリアへ旅立つ前、いつも野球をしていた仲間たちにしばらく来られなくなると伝えたのだが、その日山本は風邪を引いて来れなかったために別れの挨拶もできなかったのだ。

「私もだよ!」

その後もいろいろと話したのだが、山本がこのあと部活があるというので別れた。
走って帰りながらふと思い至った。

綱吉の妹だと言いそびれた。

家へ帰ると奈々はすでに起きて朝食の準備をしていた。
ランニングをしていたと言ったら驚かれたが、イタリアで流行っていたからやっていたのだとごまかした。
すんなり信じてくれた。

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あきゅろす。
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