知らない雨に焦がれる。
兄
湯船につかっていると、すりガラスの向こうに影が映った。
「スズちゃん、洗濯機の上に置いておくからそれを着て出てくるのよ?
ちゃんと髪を乾かしてとかしていらっしゃい。」
「うん。」
奈々は返事を聞くと、脱衣場から出た。
鈴乃はしばらくして湯船から上がって、脱衣場へ向かった。
体を拭いて、奈々の置いて行った服を手に取って驚いた。
余所行き用とは言わないまでも、普段着に、ましてや部屋着にしては上等なワンピースが置いてあった。
「お母さん、何する気なんだろ。」
とりあえず、他に着るものもないためそれを着る。
髪を乾かし、脱衣場を出るとばったり遭遇。
「あ、お帰り、お兄ちゃん。」
固まってしまった成長した兄に挨拶をする。
「あれー、お兄ちゃん?」
顔を覗き込みながら、綱吉の目の前で手をふる。
「…………スズ?」
「うん。」
「んなーっ!
な、なんでスズが家に!?」
「なんでって、帰って来たんだよ。
今年から並中生。」
兄はやはり少々頭が弱っちいようだ。
「つっくん!早く戻って来なさい!
ってあら?スズちゃん上がったの?」
「うん。」
「まぁ、やっぱり可愛いわ。サイズも良いわね。
じゃあ、二人ともいらっしゃい。」
奈々に追い立てられて、鈴乃と綱吉はリビングへ向かった。
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