知らない雨に焦がれる。
迷子宅急便
「ぅきゃぁ!?」
「お前、家光の娘だろぉ。聞いたことあるからなぁ。
家光が使う部屋までなら送ってやる。」
スクアーロは鈴乃俵担ぎにしたまま歩き出した。
しばらく呆然としていたが、はっとして鈴乃は肩の上で暴れ出した。
「は、離してください!自分で歩きますっ!」
スクアーロは慌てて鈴乃の体を支えていた手に力を込めた。
「じっとしてろっ、落とすぞ!!」
その一言に鈴乃は動きを止めた。
そしてゆるゆると体の力を抜いてスクアーロに体を預けた。それを感じたスクアーロは手から力を抜いて、支えるように触れるだけとなった。
無言。聞こえるのは高らかなスクアーロの足音のみ。
「あの、あたし自分で歩けますよ?」
「俺は忙しいんだ。お前に合わせてたんじゃいつまで経っても着かねえよ。」
「すみません……。」
再び沈黙。気まずくなって鈴乃は声をかけた。
「名前を聞いてもいいですか?」
スクアーロはちらりと鈴乃を見るが、そのまま視線を前へ戻した。
「……あ、えっと、知ってるかもしれませんがあたしは沢田鈴乃と言います。」
鈴乃は返答がないことを承知しながらも、ぽそりぽそりと話し始めた。
「あなたの言った通り、沢田家光の娘です。兄が日本にいます。」
自己紹介から始まり、しまいには好きな食べ物などのくだらないことまで話してしまった。
次の話題を探すために口を閉じた所で、スクアーロが鈴乃を下ろした。
「あそこにいるのは門外顧問のヤツだろ?」
示す先を見ると、確かにバジルがキョロキョロとしながら歩き回っていた。
「バジル!」
思わず叫ぶとバジルも鈴乃に気付いたようで、走り寄ってきた。
スクアーロはそれを見て踵を返した。
「ありがとー!銀髪のおにーさん!!」
スクアーロは振り返ることもせずに去っていった。
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