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知らない雨に焦がれる。
翌朝
翌日は六時前に起こされた。
鈴乃は家光に促されるままに眠気眼を擦りながら着替え、外へ出た。
日もまだ昇りかけの早朝の冷気に鈴乃は身震いしたが、おかげで先ほどより目覚めた。
中庭のような場所へたどり着くと、きれいに整列した門外顧問のチームと思われる人々がいた。その中に鈴乃は笑顔で手を振るバジルを見つけた。少し恥ずかしくて小さく手を振り返すと、後ろから家光が行ってこい、と声をかけた。家光を見上げて頷くと、走って偶然なのか意図的なのか空間の空いたバジルの隣に並んだ。
家光が前でイタリア語で何か話した後、そばにあったラジカセを押した。
そこから流れてくるのは馴染みのある曲だった。当然のように日本語であるそれをこの場にいる全員が歌い出す。もちろん日本語で。隣のバジルも楽しげに歌っている。
夏休みの朝、毎日のように歌っていたその曲を鈴乃も一緒に口ずさみ始める。
『ラジオ体操の歌』、この曲のおかげでこの場で何があるのかを悟ってしまった。
歌い終わった後に流れ出す予想通りの軽快な音楽に体が自然と動いてしまうのは日本人の性だと思う。
若干顔をひきつらせながら、腕を回していると、隣からすごいですね、と声が飛んできた。
もし、ラジオ体操ができていてすごい、という意味だったなら言っておこう、小学生以上の日本人なら誰でもできるはずだ。細部まで正しく、とは言い難いけれども。
ただ、鈴乃はバジルの言葉を量りかねたためそんなことないよ、と言っておいた。
第二まで終わってしまうと、人がぞろぞろと移動を始めた。鈴乃がその場で立ちすくんでいると、バジルが手を引いて歩き始めた。

「今からはランニングをするんです。各自のノルマが終わったら、少しの自由時間の後に朝食です。
今日のスズのノルマは拙者と一緒に三周ですよ。」

全員がピストルの音で走りだしたので運動会か、と思ってしまった。

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