知らない雨に焦がれる。 思わぬ出会い〜その1 小学生になりました。 幼稚園で過ごすのも大変でしたが、小学生も大変です。 分かりきった漢字をひたすら書かされ、何の苦でもない算数のプリントを宿題に出される。昼休みには鬼ごっこで友達と走り回る。 そして放課後。今日は少し遠い河原まで散歩にきた。宿題もさっさと終わるから、家にいてぼーっと考え事をしていると、お母さんに心配をかけるから、遊びに行ってくると言って家を後にした。 横のグランドでは少年たちが野球をしていた。 山本とかいたら面白いのになぁ。 やっぱりピッチャーなのだろうか。 そんなことを考えながら駆け回る少年たちと彼らが追う白い点を眺めていた。 すると、目の前にボールが落ちてきた。 バッターボックスから結構距離あるのに。少年が一人こちらへ向かっているのが見えたのでボールを拾って待つ。 少年が自分の遠投力とコントロール内に来たと思い、 「いくよ――!!」 と叫んで、大きく振りかぶって投げた。 少年は鈴乃がボールを投げたのを見て慌てて止まり、落下点と思われる場所へ移動し、ボールを取った。 鈴乃は少年が上手く取ってくれたことになんとなく達成感を感じて微笑んだ。一方少年はグローブの中のボールとそれを投げた少女を見比べた。 何度か視線を行き来させると、少年は少女にむかって駆けだした。 鈴乃の元へ着くなり少年は肩を掴み、 「お前暇か?」 と聞いた。 「まぁ、うん。」 と答えた鈴乃の手を少年は掴み、引いた。 「チームに入ってくんねーか?1人帰っちまったんだ。」 「でも、足手まとい……」 「ならねーよ。あれだけ投げれればな。 名前聞いていいか?俺は山本武ってんだ。」 まさかの山本武。予想通りというか望み通りというか。 「沢田鈴乃です。 えっと、あたしでよければ入るよ。」 「じゃあ、行こうぜ鈴乃。」 そう言って駆けだした山本に引かれ、並んで走って、鈴乃は少年たちの輪へ入った。 [次へ#] |