銃と錬金術と二つの世界
突然の
お昼もすぎ、ヴァンは書斎へこもって何らかの研究をしている。
そろそろお茶でもしようか、と水を火にかけたころだった。
キアラ…、とか細い声が聞こえた。
ゆったりと腰掛けていたトリシャからだった。
「トリシャ!?」
「ピナコさんを呼んで来てくれないかしら。
産まれるかもしれない………」
わずかに眉を寄せているが幸せだと言うように微笑んでいた。
キアラはわかったと上着を取り、玄関まで走ったが、踵を返し荒々しくヴァンの書斎の扉を開いた。
音が大きかったのか、部屋の主は肩をびくりと揺らした。
「なんだキアラじゃ」
「トリシャを部屋に運んで！それからタオルとお湯を用意して。できるだけたくさん!!」
のんびりとした声を遮ってそれだけを叫ぶと、扉も閉めずに今度こそ玄関を飛び出した。
一方、状況説明もなく怒鳴るように指示を出していった小さな養娘に残されたヴァンはしばらく呆然としていたが、娘の言葉を何度か反芻すると、顔を真っ青にして妻の元へ駆け出した。
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