銃と錬金術と二つの世界
暗い空間
気づくと暗闇にいた。
辺りは一面、新品の真っ黒なマーカーで塗りつぶしたように黒い。
不自然なことはひとつ、光など無いようなこの空間で自分の体だけははっきりと見えることだ。
そういえば見慣れた体だ。赤ん坊になる前の姿。今気づいた。
とりあえず、試しに太ももから銃を抜き、前方に撃ってみる。
発砲音が響いたあと暫く待つが、その後の音はない。つまり何にもぶつからない、何もない場所なのだ、ここは。
じっとしていても仕方ないので、一歩踏み出した。足を動かす度にカツッと高い音が周囲に広がっていく。
どのくらい歩いただろうか、何も見えない、何も感じない、何も当たらない。いくら慣れているとはいえ、ヒールで歩いて何も感じないとはどういうことだ。
ふと、名前を呼ばれた気がして立ち止まった。しかし、どれだけ待っても次の音は聞こえない。
もはや無駄なように思えてきたが、また一歩踏み出す。
「キアラ」
今度ははっきりと聞こえた。
キョロキョロと辺りを見回す。何も、ない。
「後ろよ、キアラ」
そう聞こえた瞬間、黒色だけだった世界にオレンジ色がこぼれ始めた。
ゆっくりと振り向いた。
「久しぶりね、キアラ」
「ルーチェ!!」
ルーチェはにっこりと微笑んだ。
「久しぶりって昨日会ったばかりじゃないか。
それより、どうしたんだ?
というかここはどこだ?」
「ここは、そうね………精神世界、それか異空間と言うのがいいと思うわ。
どうした、という質問には『あなたに説明しにきた』という答えが正しいかしら?」
「説明?」
「そう。あなたは訳がわかっていないだろうから。」
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