とびらのむこうとこころ 1
「シンクロテストがあったの…前と変わらないわ」
『"きにしすぎちゃだめ"』
『"れいならだいじょうぶ"』
「…ありがとう」
とびらのむこうとこころ 1
私は良く憶えていない。名前(カタカナ)といつ出会ったのか、いつからいっしょにいたのか。
気付いたら私の側には名前(カタカナ)がいて、それがおかしい事だとは思わなかった。
それが当たり前だったから。
「レイ、もう一度だ」
「はい」
「名前(カタカナ)君、継続して良い値がでているわ。このまま続けて」
「…はぃ」
碇指令と赤木博士がモニター越しに私達に話しかけてくる。
名前(カタカナ)はいつも良い結果で、私とは違う。
「二人ともお疲れさま。シャワー浴びてきていいわよ」
今日のシンクロテストはこれで終わり、私の身体にはまたアザが出来た。
「(痛くは、ない…)」
エントリープラグから出てシャワーを浴びて、着替えて赤木博士に今日の結果をきいて、帰る。
私がするのは、それだけの動作。
でも、違った。
「(…私の居場所は)」
与えられた家に当たり前のように帰ってきて、私はベッドに倒れこんだ。
「(居場所…)」
…ガチャ
ドアの開いた音がした。
「…誰?」
「…レイ」
さっき別れたはずの名前(カタカナ)がそこにいた。
手には赤い十字架の描かれた白い箱。
「…レイ、痛いは治さなきゃだめ」
そう言うとベッドに腰を掛けて膝の上に救急箱をのせる
「じゃないと死んじゃう」
中には湿布と包帯しか入っていない。
私は知っていた、この救急箱は私専用だと。
名前(カタカナ)の手が私の制服をたくしあげていく。
不意にぐっと脇腹の辺りを押してきた。
「…っ」
ジンジンする痛みに思わず息がつまる。
それを見た名前(カタカナ)が眉間に皺を寄せたけど、その顔の意味は分からない。
名前(カタカナ)は黙々と湿布を貼って、アザの大小は関係なく只々貼っては包帯を巻いていく。
「(縒れてる)」
作業をしていた名前(カタカナ)の手を掴んでとめる。
「自分でやるわ」
包帯を受け取って巻き直す。
その間名前(カタカナ)は私の手元をじっと見ている。会話はない。
「レイは、じょうず」
ぽんぽんと私の頭を撫でる名前(カタカナ)の手は、すごく心地よかった。
ずっと続くと思ってた。
名前(カタカナ)が居なくなるまでは…
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