なつととびらのむこう
シンジは初号機のパイロットになった。
父親からの突然の手紙も全てに裏があったが、そんな状況も受け入れた。
そして、二人のシンクロテストが行われたある日。
「あっ綾波どこいくんだよ」
綾波が彼に、ついてこいと言った。
シンジは振り向きもせずにただ歩みをすすめるレイを追って、格納庫の奥へどんどん進んで行く。
すると、深緑のペンキで"lost "と書かれた黒いドアの前で止まる
「…知らない」
「えっ!?」
彼女は躊躇わずにノブに手をかけ、押し開いた。
「碇君は知らない…」
なつととびらのむこう
眼前にはエメラルドグリーンの見たことのないエヴァ。
「どうしてこんなところに…」
「…名前(カタカナ)」
「名前(カタカナ)?」
「渦乃名前(カタカナ)、このエヴァのパイロットよ」
「リ、リツコさんっ」
そして赤木リツコがいた。
彼女の視線はシンジ達ではなく、エヴァと繋がっている数台のモニターとコンピュータに注がれている。
「彼はこのエヴァに選ばれた適格者、でも…」
「でも…どうしたんですか?」
「ロスト・チルドレン、文字通り失われてしまった…名前(カタカナ)は、エヴァと一つになったのよ」
ふとモニターから目と反らしシンジの目を真っ直ぐに見詰め、話しはじめた。
「二年前、起動実験中にエヴァとのシンクロ率が基準値をこえて、そのままLCLに溶け込んでしまったわ」
「…助けられないんですか」
「助けたいからこのままなのよ、常にデータはとっているし。それに確かに思考しているのよ、名前(カタカナ)は私達の目にうつらなくてもこの中にいるの」
二人の会話を聞きながら、綾波はおもむろにパソコンに繋がっていたマイクに話しかける。
「名前(カタカナ)…おはよう」
『"おはよう"』
「えっ」
パソコンの画面には綾波への返事が帰ってきた。
「今日は元気そうね、安心したわ」
それがさも当たり前であると言うように反応したリツコに、シンジが問いかける
「ど、どういう事ですか!?今パソコンに…」
「そうね、だから名前(カタカナ)は生きているの…
エヴァの中で…」
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