はじまりのなつ
蝉の鳴く声がする
太陽もじりじりと照りつけてくる
「(…さむぃ)」
一人の少年が古びたビルの屋上で寝そべっている。
着ている制服は長袖のYシャツにネクタイをつけたままで、衣替えはされていない。
季節はすでに夏なのに汗一つかいてはおらず、肌は陽にやけず青白く、照りつける光を目から遮る様に挙げられた右の手首には白い包帯がまかれている。
「(今日は検査の日…)」
そう思うと彼はだるそうに身体をおこす。
暖かい熱をのせた風がふいた。
はじまりのなつ
「まいったナ、よりによってこんな時に待ち合わせなんて」
黒髪の少年が駅前の階段で座り込んでいる。
彼は碇シンジ。
十数年ぶりに父親に会おうとしていた。
手紙の中に入っていた写真には見知らぬ女性とふざけたコメントが書き込まれていた。
「しょーがないな、あと2駅歩くしかないか」
そうして少年は歩き始めた。
風を切る音が頭上にはしる。
「じゅ、巡航ミサイル!?」
着弾と同時に上がる粉塵と何かの咆哮
「な、なんだよ、あれ…」
狼狽えるシンジを墜落した爆撃機の爆発が襲う
「お待たせシンジ君!!こっちよ早くのって」
彼の身を庇うように止まった車の中からは写真に写っていた女性。
「か…葛城さん?」
「いいから急いで!!」
「あ、はいっ」
「しっかりつかまってんのよ」
シンジを乗せて、車は走り出す。
父親のもとへ
変化する夏のなかへ
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