めざめとしあわせのかたち 1
「やった!」
「完全に沈黙しました」
喜んだのも束の間、激しいアラーム音がして本部からの緊急回線が開く
『赤木リツコ博士、至急本部にお戻り下さい!
改良機からの反応が途絶えました!!』
(そんな、名前(カタカナ)君が死ぬなんて!)
移動がもどかしい
早く、早く
死なせたくない
めざめとしあわせのかたち 1
名前(カタカナ)君と最初に出会ったのは彼が5歳のとき。
渦乃博士が手を引いて研究室に連れて来た。
(痣だらけ…)
改良機の適格者だと言うから、本当の親子ではないことはたしかで、それにしても、身体の傷は異質だった。
(この人ならやるわね)
虐待も…そう思った。
だからといって、注意して治まる人でもない。
私は一切関わらないことを決めた。
「赤木博士私の名前(カタカナ)を預かってくれない?」
いい子にしてるのよと名前(カタカナ)君に言って、私の了解も得ずに何処かへ消えた。
たぶん、男のところ。
(不憫な子…)
それが私の第一印象。
「お名前は?」
「…」
反応は帰ってこない。
「今何歳?」
「…」
これもだめ。
(埒があかないわね…)
私は名前(カタカナ)君を無視してそのまま作業に戻ろうとした。
ボロボロの服装、ボサボサの髪の毛、赤黒く変色した白い肌、濁って何も映さない瞳。
(まるで…)
捨て猫みたい…
それ以来、私は名前(カタカナ)君を無視出来なくなってしまった。
「おいで」
「…ぅ」
試しに猫に接する様にしてみた。
すると少しだけ反応が帰ってきて、本当に猫みたいで見捨てられなくなった。
(警戒心が強いわね…)
「これ、あげるわ」
おもむろにデスクの上にあったクッキーを一つ差し出してみた。
「…ぅっ」
反応が帰ってきた…?
でも違う、これは
「…大丈夫よ、おいで」
泣いてる…
よたよたと近付いて、少し離れた所で止まった。
「…ごめっ、なさい」
えづきながら、謝る姿は胸が苦しくなる。
「ぅまれっ、ごめ、さい」
生まれて、ごめんなさい
確かにそう言った。
(可哀想な子)
調度名前(カタカナ)君がいる位置は手を伸ばせば届く距離。
そうしろと教わったのかもしれない。私が右手をかざすと、小さな身体を震わせた。
「(この距離ならすぐに殴れるわね…)」
名前(カタカナ)君、と名前を呼んだら、猫に話しかける様な声色で自分でも驚いた。
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