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『世界はそっち側』
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「……んな所で何やってんだ、お前……」

「あ?……なんだ、結城か」


「おはよう」と挨拶すれば周りが若干ざわついた。
心なしか、結城の表情も怪訝そうに引きつってる気がする……朝の挨拶も駄目なのか。
そこで初めて周りの状況に目がいった。


「……なんか、囲まれてる?」

「当然だろう。不愉快な奴が珍しく食堂に来ているうえに覗き行為……不審すぎんだろ」

「確かに中の様子を見るのに覗いていたが、誤解だ。来たの初めてだから、どんなもんなのか見てただけ……うわ、普通に考えて怪しい奴だ……」


自分で言ってて怪しいとか泣けてくる……。
飲食店の前を、ただただうろついてたり、店に入らないで外から覗くだけとか、不審者すぎる。
更にはオレの容姿もあって、目立ったのだろう。気を付けなければ。
一人反省していれば、結城が重い溜め息を一つ吐き、食堂内に入って行くから慌ててそのあとを追った。


「……なんで着いてくるんだよ」

「だから、食堂初めてって言っただろ?教えろよ」

「なんでオレがっ」

「風紀委員会は困っている生徒を見捨てる委員会だったのか?」

「…………」


ちょっと嫌味っぽい言い方をしてみれば、結城がじろりと睨みを効かせた視線を向けてきた。
さて、どう動くか―――鋭く突き刺さる睨みに若干肩を揺らしかけたが、なんとか耐えて相手の出方を見る。
相手も嫌味ったらしく言い返してきたり、怒りを露にするかと思いきや、結城は視線を一度オレから外して無言で足を動かした。
不思議に思っていたが、特に何も言われていないからそのまま着いていった。
結城が食堂に入った瞬間、―――いや入る前からそうだったけど、結城の姿を見た生徒達が一斉に悲鳴に近い黄色い声を発した。


「風紀委員長様だ!!素敵ー!!」

「朝からお姿を見れるなんて、幸せです!!」

「結城様、格好良いー!!」


主に、見た目が男子高校生に見えにくい可愛い系統の容姿をした生徒達が、とろけた表情を結城に向けていた。
向こうでも似た様な光景を見たが、こっちの世界では向こうの比じゃない位の熱狂ぶりだな。
中にはオレがいる事に気が付いた生徒もいて、そいつらはオレを睨んできた。うーん……。
周りの状況を受け止めながら着いていった先は、食堂二階に続く階段。
二階スペースのある食堂って珍しいな。そう思いながら階段に足をかけた瞬間、周りの生徒達が静かに騒ぎ始めた。


「あいつ……、二階に上がるつもりだぜ?」

「いくら役職持ちだからって『忌子』の分際で……汚らわしい!!」


ひそひそ、ざわざわと話される空気に若干居たたまれなくなり、階段にかけた足をとりあえず戻す。
さて、どうすっかな……。視線を上げれば結城がこっちを見てたけど、自分は関係ないとそっぽ向いて階段を上りきってしまった。
教えてくれないのかよ……冷てぇな。でもこの反応と対応がこの世界での当たり前なのか。
他の生徒に聞くにも答えてはくれないだろうな。
生徒会長を務めていても、世界観が異なるってだけでこうも違いがはっきり目に見えるのを、改めて感じた。
上がるべきか他のテーブルに着くか、悩んでいれば「どうしたんだい?」と声をかけられた。


「そんな所に突っ立って、どうしたの?」

「……ナイスタイミング。あのさぁ、聞きたいんだけど」


声をかけてきたのは、この世界で今のところ唯一の味方である青海だった。


2017/2/19.



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