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『世界はそっち側』
10


「……カレンダーの印、聞き忘れた……」


夢の中から戻ってきての第一声。
あんなに長く濃い夢を見てたっていうのに、何故寝る前に抱いた疑問を忘れたのか……。
また来月になればわかる事なのだが、オレにとっては初めての事だ。自然と身構えてしまう。
兎に角、起きて顔を洗ってご飯を食べよう。
昨日から口にしてないせいで胃が限界を訴えている。
顔を洗い、着替えてふと思い出し、机へと足を運び、引き出しを開けて目的の物を探す―――彼の言った笛だ。
順番に引き出しを開けていき、最後の一つを開けたそこに、一つ箱を見付けた。
大きさは、片手で少し大きい位で、包装や装飾が施されている訳ではない、ただの白い箱。
蓋を開ければ、中身が壊れない様にと詰められたクッション材と、その上にごつごつとした、歪に歪んだ円錐状の青い何か。
円錐状の物は、その形の流れに沿う様に節があり、先端に向けて節の間隔が狭まっている。
それを手に取れば、非常にしっかりとした作りにも関わらず、見た目よりも軽かった。
探し物の笛らしい物は見当たらなかった為、もしかしてこれかと思ったが、平穏な世界を生きてきたオレでもピンときますよ。
これは―――……。


「笛っつーより……なんかの角じゃね?」


良くRPGやファンタジー系の映画とかでこんなの見た事あるぞって位、小さいながらも立派な角だ。
なんの生き物の角かは知らないが、いざって時に吹けと言われた以上、これが笛なのかどうかも確認は出来ないが、恐らくは合っている……筈。
角笛、GETしました。
とりあえず箱と一緒に入っていたお守り袋に角笛を入れて、肌身離さず持ち歩こうと決めた。
さて、今日は何をしようか。
魔法に関しては夢で教わったから良いとして、今日は教科書見たり、私物の確認とかするか―――まぁ、まずは飯だな。
確か学園案内には日用品や文具等を買う時は現金での支払いだけど、食堂での支払いは鍵を使うって書いてあった。
机の上にゴールドに輝く鍵があり、それを手に取る。部屋の施錠以外にも、学園内での身分証みたいな役割も果たす鍵は、なくさないように各々工夫を施している様だ。
オレの場合は鍵にチェーンを通して首からさげていたらしい。
食堂に行くだけだから鍵―――と、一応お守り袋―――だけで良いかと部屋を出た。
……あ、日焼け止め……室内だから大丈夫か?いや、前みたいに紫外線を気にしなくても良いのか。
元の世界でのオレの身体は、生まれつき紫外線に弱く、肌をさらせば直ぐに赤くなり、痛みを伴う。
他にも瞳の色素も薄く、影響を受けやすい為、オレは外に出る時は必ず日焼け止めを塗り、肌の露出を控えた服装にUVカット仕様の眼鏡をかけ、日傘を差して出掛けていた。
だけど、魔法の世界でのこの白い身体は、紫外線に弱い体質という病気とかではないから、太陽の下を歩いても大丈夫だと夢の中の"オレ"は言っていた―――瞳に関しては、以前と同じとまでは言わないが、人よりは眩しく感じやすいのは変わらないとも。
まぁ、でも日焼け止め塗るだろうし、常に長袖姿ではあるだろうな……癖みたいなもんだし。
ただ、日傘なしで外を歩くのは緊張するな……あっ、明日、転校生を迎えに早速 外に出るじゃん。
兎に角、どんな感じかを確かめるにも良い機会だし、飯食ったらまず部屋のカーテンを開けてみるか……緊張するな……。
そんな事を考えていれば、食堂に辿り着いた。
学園案内に地図が載ってて良かった。
ざわざわと賑わう食堂に、さてどういうタイプの食堂かなと外から少し眺めてみる。
食券を買うタイプではないらしい。ウェイターが注文を取りにくるタイプでもない様だ……珍しいな。
かと言ってウェイターが注文した物を運んでくるって訳でもない。
どういう仕組みなんだと疑問に思ってたから、近くにいる生徒達から不審な目を向けられていた事に気付かなかった。


2016/12/31.



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