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『向日葵の咲く頃には』
6


相手の態度を不思議に思い、気がそれていたオレの視界に更に影がかかる。
なんだろうと意識を戻せば、一條が更に距離を縮めてきていたらしく、一條のどアップの顔が目の前まできていた。
咄嗟に反応して顔を反らそうとしたけど、顎を掴まれたままの状態ではさほど反らす事は出来ず、逆に戻されて固定された。


「あのっ、ちょ……、?!」


ストップをかけようと一條の胸元に手を置いて、ぐっと押してみるがびくともしなくて、抵抗を見せるオレを嘲笑うかの様に、一條は弧を描きながら口角を緩く持ち上げて、向けられる先に思い当たったオレはぎゅっと瞼をきつく閉じた。
閉じた瞬間、額に柔らかい感触が一瞬触れて、やっぱりかと薄らと瞼を上げて確認するが、続けて瞼に一條の唇が触れてきた為、再び閉じる事に。
小鳥が餌を啄む様なそんな一瞬の行為だけど、瞼の次に鼻先や頬、そして顎に続けられて、オレは熱を上げる一方なうえに、終いには薄らと涙を浮かべた顔を一條に見られた羞恥心から「うう……」と情けない呻き声を上げる。
そんなオレの反応が楽しいのか、にやりと不敵な笑みを浮かべる一條が、あの時同様に今度は唇の端にキスを降らしてくる。


(……っ、なんで唇にはしないの、この人……)


もどかしさから、つい一條に視線を送って見れば、一條はオレの考えに気付いたのか楽しそうな声音で言う。


「言っただろ?ちゃんとして欲しかったら上手におねだりしてみせろって」

「ッ……」


確かに言われた。あの時は流れで言った冗談とか挑発だろうと思っていたのに、それは冗談でも挑発でもなかったらしい。
「ほら早く」といったふうに唇以外の箇所にキスの雨を降らす一條に、オレはぶるりと身体を震わせる。
恥ずかしい要求を迫られているというのに、なんだってこんなに甘くて溶けてしまいそうに思えるのか。
真っ赤な顔で耐える様に唇をぎゅっと噛みしめていれば、一條の瞳が一瞬すっと冷ややかなものになる。



「っ、ぅわ……?!」


突然下の方にぐりっという刺激が起きてびっくりしてそちらを見れば、一條の膝がオレの両足の間に割り込んでソコに押し当てられていた。
「なんでこんな事に……」そう問うように視線を一條に戻せば、相変わらずの表情のままで再びぐりぐりと膝を動かしてくる。


「ひ、ッ……!!や、まっ……?!」

「さっさとねだれって」

「や、……耳、も、やめッ……」


下半身には一條の膝が、加えて先程から服の中に両手を突っ込まれて胸元を弄られ、更には耳元に唇を寄せられ、息のかかる近さで囁かれる。
一條から与えられる熱にじわじわと嫌な汗が滲み、脳内には昔の記憶が少しずつだが、鮮明に映し出されていく。
真っ暗な空間に、まるで楕円形のモニターのようなもので映し出される記憶の映像では、トラウマの原因となった見知らぬ女の姿が映し出されていて、黒く靄がかった顔は楽しそうに笑っている。
記憶により息を乱してパニックに陥り、身を捩れば胸の飾りをきゅっと摘ままれ、びくりと肩を揺らした。
その反応に満足そうに頭上からくすりと笑う声がして、そのまま捏ね繰り回される。
胸を弄られて、下半身も刺激されて、耳元に低音の腰に響く囁き声で全身がぞくりと粟立つ。
あまり人に触れさせない箇所を触れられて、恐怖からなのか、またはそうでないのか、声が上がりそうになる感覚に耐える様に瞳を閉じれば、溜まった涙が頬を伝って行く。
耳を占領していた唇が不意に離れていったかと思えば、一條の顔はまたもオレの顔の目の前にきて、今度はお互いの唇が触れてしまうのではないか、という距離で停止した。


「んっ、あ、いや、だ……ッ!!」

「反応は悪くねぇな。感度も良い方だし……慣れてんのか?」

「ッ……!!」


目の前で問われて小さく首を振る。
思いきり振って否定したかったけど、そうするとギリギリの距離にある一條の唇に触れてしまいそうで僅かな動きだけとなった。
かたかたと震える身体を落ち着かせられなくて、目の前の現実と記憶の映像が重なり合い、それが怖くてぎゅっと目を瞑って上がりそうな悲鳴をやり過ごす。


「初めてだっつーのに、はしたねぇな。それともこういう事されて喜ぶ淫乱なのか?」

「ちが……違う、ッ!!」

「違くねーだろ、ここ勃たせてさ。気持ち良いんだろ?」


敏感になった身体を弄る両手と膝に力が籠り、更なる刺激が襲いかかってきて、びくりと腰を浮かす。
接触二回目にしてこんな目に合うなんて思いもしなかったオレの身体は、素直に反応を見せて不本意だが目の前の男を楽しませる要素となる。
結構本気で精神的にもやばくて、でも与えられる感覚にもやばくって、混乱する中で抑えきれない涙がぽろぽろと零れ落ちていく。
そして布越しに与えられる刺激が頂点に達して「もう駄目だ……」そう思って更にきつく目を閉じた。


2015/11/27.



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