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■短編■
2016/2/5〜【8】


【居眠り王子とオレ 8】


明美さんのお陰(?)で自分の中でもやっとしていた感情に名前が付いた。
自分でも信じられないが、どうやらオレは国定に恋心を抱いているようだ。
しかもそれを発覚した瞬間、簡単に受け入れてしまった辺り結構本気で好きなのだろう。
……さて、ここ問題が生じた。
何が問題って、自覚した途端に国定のオレに対する行動の一つ一つが心臓に悪いという事だ。
自覚した途端にこんなだなんて……少女漫画の主人公かよ。
それでも席は隣だし、約束の一ヶ月もあと少しあるから目覚まし役は続くしで、なるべく気にしない様にはしている……つもりだ。


「今日から上でご飯食べよう」

「教室じゃないのか?……じゃあ明美さんも……」

「二人きりが良いから明美は誘わない」


俺達は何時も教室でご飯を済ますが、国定は屋上へ行こうと誘ってきた。
教室には他の人もいるから平常心でいられたが、二人きりは緊張してまずいと思い、明美さんの名前を出したが断られてしまった。
しかも国定の口から「二人きりが良い」とはっきり言われてしまい、国定が何を考えてそう言うのかわからないが、オレは頬に熱が集まるのを抑える事が出来なかった。
顔を見られたくなく、逸らしながら「……わかった」と小さく呟けば、聞き取れた国定はオレの手を掴んで歩き始めた。
……最近良く手を繋ぐせいか、クラスメート達も何も言わない。それがまた恥ずかしい。
屋上に着けば人の気配もなく、ただ数日続く綺麗な青空と心地好い風が俺達を迎えてくれた。
フェンスに寄り掛かりながら並んで座り、お互い他愛もない会話をぽつぽつ話ながらご飯を食べる。
緊張して弁当の味がわからなかった事に内心呆れた。


「もうちょっとで席替えだね」

「っ、あぁ……そうだね」


空を見上げながら国定が突然そう切り出したのは、お互いの弁当が空になって少し経った頃だった。
オレもそれに習って空を見上げた時、手に何かが触れてきてびっくりして視線を向ければ、触れていたのはオレのより少し大きめの国定の手だった。


「く、国定……」


驚きと緊張で変な態度で国定の名を呼べば、国定の視線がオレに向けられた。


「離れるの、寂しいね。ずっと富山の隣にいたい」


そう言いながら触れる手に力が込められて涙が出そうになった。


つづく

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2016/2/5〜2016/3/3.




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