■短編■
2016/1/4〜【7】
【居眠り王子とオレ 7】
移動教室に向かう中で生まれた謎の感情に、疑問と驚きで頭の中がいっぱいになり、いまだにその理由を自分の中で見付けらないまま、目覚まし役のお務めも残すこと数日。
一ヶ月というのは本当にあっという間で振り返てみれば、お務めと言う程の大変さもなく、普段良く寝ていた奴に「おはよう」と声をかければ返事が返ってきて、授業でわからなかった所を聞けば「ここはね」と親切に教えてもらった。
そんな日常を、国定と当たり前に出来ている事が不思議と嬉しくて、隣に感じる存在感や視線、温もりに安心感が生まれて、何時からか触れる手から伝わるほんの少しの熱に緊張してて、月が替わる頃に近付くにつれて寂しさを感じ、まだ隣にいたいと願うようになっていた。
別に目覚まし役が終わるってだけで、席が離れるってだけで友達じゃなくなるって訳じゃないのに、オレはどうしたいのかがわからない。
「……そこまで出ててわからないの?」
「……何がでしょうか」
このもやもやと晴れない気持ちを吐き出す為に屋上へと明美さんを呼び出し、一通り思ってる事を話した。
そしたら明美さんは「……嘘でしょ」と信じられないといった様な表情でオレを見てきた。
明美さん、オレはわからないから聞いているのですよ……。
「富山君は次の席替えで俊明と離れるのが寂しいのよね?」
「う"……まぁ……うん」
「手繋いでなんでか緊張するのよね?」
「……うん」
改めて聞き返された事に相槌を打って応えれば、明美さんは顎に手を添えて考えると、ふとオレに視線を戻した。
「富山君さ、俊明の事好きなんじゃないの?」
「?好きか嫌いかで言えば好きだけど」
「違うそうじゃない。俊明の事を恋愛感情で好きなんじゃないのかって言ってるの」
「……は?」
何を言い出すんだ明美さん……。
オレは明美さんの発言を一瞬遅れに理解して間抜けな声を上げた。
オレが?国定を?恋愛感情で好き?手繋いでどきどきしただけで?他とは違って真っ直ぐ見返して話してくれてるだけで?席が隣じゃなくなるのが寂しいだけで?側にいたいって思ってるだけで?
オレは国定の事が好き――……?
「………」
「顔真っ赤よ、富山君」
……オレは、まさかの答えを見付け出してしまったようだ。
つづく
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2016/1/4〜2016/2/5.
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