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■短編■
2015/12/5〜【6】


【居眠り王子とオレ 6】


目覚まし役と友達を始めてあれから更に二週間。
起きている事が当たり前になった為か、最近のクラスメート達は良く国定に話しかけたりする姿が見られる様になった。
他愛もない会話ではあるが、しかし国定はそれに相槌を打つばかり。
女子からの呼び掛けに関しては愛想笑いで適当に返答している。
……モテる男の余裕なのか、もしくは興味がないのか定かではないが、羨ましいような、腹立たしいような……。
それでもオレと明美さんには正面から向き合って話してくれるから、特別感があってちょっとだけ嬉しかったりはする。
あ、明美さんは幼馴染みだから当たり前なんだけどさ……。


「富山。次、移動だよ」

「……えっ……あ、うん」


隣から声をかけられてびっくりし過ぎて反応が遅れた。
何時もならオレから言わないと移動しようとしない国定からまさかのお誘い……お誘い?と言うのか?ん?いや、移動教室に行くだけだけどさ。


「早く行こ」

「っ、……ちょ……」


「待って」と続く前に国定に腕を掴まれ立たされて、下がった手がオレの手を握り、引かれた。
教室内には人が少ないとはいえ、ちらほら残っているそんな中で手を握られてどきりとする。
教室を出るのと同時に放された手がひやりと空気にさらされ、なんとなくその冷たさが寂しく感じて、ちらりと国定の手に視線を向けた。


(……も、ちょっと繋いでいたかったなー……って……)


そこまで考えてはたと立ち止まる。
今、オレは何考えた……?ん?手繋ぎたい?放されて寂しい?


「……………?!、??!」

「……富山、大丈夫?凄い百面相してるけど……」

「うぇっ?!……あ、あー!!うん!!だ、大丈夫!!」

「本当に?なんか顔赤いけど……」

「本当!!大丈夫!!ほら、早く行かないと遅れる!!」


国定に顔を覗き込まれ、目が合った瞬間どきりと心臓が高鳴って慌ててそっぽ向く。
どきどき鳴る心臓と顔に集まる熱の理由がわからなくて、国定を置いてそそくさと歩みを進めた。


(ちょっと待て、何これ……え?!嘘……いやいやいや……?!)


頭の中でパニック起こして目的の教室とは別の方向に向かった事に国定に笑われ、ちょっと恥ずかしかった。



つづく

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2015/12/5〜2016/1/3.



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