■短編■
2015/11/2〜【5】
【居眠り王子とオレ 5】
目覚まし時計役を引き受けて早一週間、その光景にクラスメートも担任も慣れてきていた。
引き受けた当時の午後の授業と翌日の各授業の各担当教師達の反応と言ったらもう……。
「……く、国定が起きている……だと……?!」
出席確認の際に、普段は寝ていて返事がないから何時も姿を確認する事で通っていたから、見れば起きている国定に驚いても仕方がない。それ程珍しい事なのだ。
初めこそクラスメート達も驚いていたけど、今じゃそれが普通になってきている。
担任には、起きている事に逆に心配されていて、オレは苦笑を漏らした。
国定がオレとの決め事を説明すれば納得し「頼むぞ」なんて肩を叩かれた……担任なんだから少しは協力するとかないのか。
が、この一週間で国定を起こすのも慣れた。
国定は一度寝ると身体を揺するだけじゃなかなか起きないが、何度か声かけをすれば目を覚ましてくれる。
授業でわかりにくかった所を休み時間に聞けば教えてもくれるし、そのまま寝ずに次の授業を受けたり。
初めは苦労しそうだなと思ったけど、案外楽だった。
そして目覚まし役以外に受けた友達関係もあの日から築き上げている。
休み時間に起きている間の会話や、昼休みに一緒にご飯――たまに明美さんもご一緒――、放課後はオレも国定も部活に入っていないうえに帰り道の方向が一緒という事もあって、寄り道しながら一緒に帰ったりと、割りと充実した楽しい日々を過ごしている。
「富山君に頼んでから今の所順調ね」
そうお弁当に箸を付けながら明美さんはしみじみと呟いた。
飲み物を買いに行って国定のいない中、屋上にはオレと明美さんしかいない。
「案外直ぐに起きてくれるから助かってる。これで寝起き悪かったら挫折するわ」
「……俊明、本当は寝起き酷い方なのよ?昔、起こしてた時凄く苦労したもの」
「そうなの?」
「そう」
そう言って明美さんは一口サイズの玉子焼きを口にする。
オレはというと明美さんの発言に「どういう事だ?」と疑問に思いつつ、それをご飯と一緒に咀嚼し、飲み込んだ。
つづく
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2015/11/2〜2015/12/4.
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