short(mix) 柳蓮二のデータ収集 「お前はなかなかに謎が多い人物だな」 「…別に隠してるつもりはないけど」 放課後の教室。俺は日直当番だったので日直日誌を書いていたところ教室にはいつの間にかその生徒と二人きりになっていたようで、残っていた生徒に話しかけられ目線は日誌にやったまま答える そう、俺は自分から人に話し掛けに行ったりしないし、友好関係があまりないから自分の事を話す機会もいない。ただそれだけ、隠しているわけではないのだ 「そうだな…」 しばらくの沈黙が流れそちらに目をやると 真っ直ぐにこちらを見る目線と絡まり合う 「お前の事を色々と知りたくなった。付き合ってくれ」 「付き合うって、何に?」 「今のは告白の意味での『付き合ってくれ』だ。要するに俺の恋人になってくれと言ったんだ」 それはとても唐突な クラスメイト柳蓮二からの告白 俺は恋愛に興味はないけど、特に断る理由もないので男同士だとかあまり話した事ない奴だとかは考えず俺はその告白を受け入れ この日から俺は柳蓮二の恋人になった 「ふむ……」 「…………」 「…………」 「……なに?」 何か言いたげだが続きを言わない柳に仕方なく続きを言うように聞いてやる秋の夕暮れの帰り道。風が冷たく今日はブレザーを着てきて正解だったななんて考える 「俺たちが付き合ってもうすぐ3ヶ月になるな」 「そうだね」 「恋人らしいことをそろそろしてもいいと思うんだが」 「今こうして一緒に下校してるけど?」 そう答えるといつもの優しい笑みで笑われる。こうゆう関係になってから柳は俺に尽くしてくれるし優しい。朝、俺の家まで迎えにきてくれたり苦手科目を教えてくれたり、休みの日は俺のために時間をつくってくれたり、こうやって帰りも家まで送ってくれている。夜はおやすみ前の電話をしてから寝るのが日課になっている。それなりに俺も女の子と付き合ってきたけどそもそも恋愛事に興味がなかった俺はそこまで彼女達に尽くした事がなかったので、長く続いた人もいなかった。 なるほど、こうゆう気遣いが大事なんだななんて考える。 俺は不満なかったのだが、柳は何か物足りなかったのだろうか 「これくらいは友達でもやるだろう。俺たちはハグやキスどころか手すら繋いだ事ない」 「やっぱり男同士でもそーゆーことするんだね」 「お前さえ良ければ俺はしたいと思っている」 「じゃあ…」 右手を差し出す 「ん、」 柳は一瞬驚いた顔をしたかと思うとにこりと笑い、柳の手が俺の手を取る 「嬉しいものだな」 「そう、喜んでくれたなら俺も嬉しいよ。柳の手ってあったかいんだね」 「お前の手は冷えてるな」 「また一つ俺のこと知れたね」 「ああ」 「柳ってさ、」 「うん?」 「俺のこと知るために俺と付き合ってるんだよね?それってどこまで知れたら満足なの?」 「完璧に満足する日は来ないだろうな」 「そうなの?」 「ああ、最初はお前のことを知るために付き合ってもらってたんだが、いつの間にかお前の事を好きになっていたんだと気づいた。好きなやつの事は飽くことなく知りたくなるものだ」 そう真っ直ぐに言われ少し照れくさくなる 「柳って俺のこと好きなんだ」 「今更だな」 高い位置にある柳の瞳と目が合い「キスしたいなぁ」なんてふと考える 「何を、考えてる?」 「さぁね、教えない。けど柳と一緒のことかもね」 そう言うと柳は俺の身長に合わせて少し屈みどちらからともなく唇が合わさる なんだか恥ずかしくなり柳に抱きつき胸に顔を埋めると柳の鼓動音が伝わってくる 「俺、柳の事好き……かも」 「フッ…"かも"か、だが少しでも俺のことを想ってくれているのなら嬉しい」 優しく笑われ顔が熱くなる。もう耳から入ってくる音が柳の鼓動音なのか自分の鼓動音なのか分からない。 好きな人のことは知りたくなる。その通りで俺も 「俺も蓮二のことたくさん知りたい」 そう言うとまた優しくキスをしてくれる。 [次へ#] |