long(RIKKAI@)
リベンジマッチ
合宿七日目
朝、早めに目覚めた羽月は朝食の時間まで散歩しようと外へ出る。
真夏の日差しを浴びながら見慣れない街を歩く、
少し休憩しようとベンチに座っていると「羽月くーーん!」と声が聞こえ、声の方向へ目を向けてみると芥川が手を振りながらこちらに向かって走っていた
「おはよう。芥川くん」
「おはよー!」
「ジョギング?」
「うん!今日なんでか早くに目が覚めちゃったから普段やってない分ジョギングしてみよーって走ってたら朝から羽月くんに会えるなんて嬉Cー!」
嬉しそうに隣に座る芥川。最初は常に眠そうにしてるイメージで少し対応に困っていたが、元気な彼を見ていると羽月も自然と笑顔になる。
すると芥川はジーっと羽月の顔を見る
「どうしたの?」
「やっぱ羽月くんってキレーな顔してる。一緒にいると落ち着くし、氷帝に来ちゃえばいいのに」
「フフッ、お誘いありがとうね。でも今から転校はちょっときついかなー」
「そっかー、残念!でもでも、学校違くても友達になってくれるよね」
「もちろん。喜んで」
「やったー!」
急に抱きつかれ驚くが、本当に嬉しそうな彼を見ているとつい甘やかしてしまいたくなり、まあいいかとなってしまう。
(歳同じなのに弟が出来たみたい)
「………?」
先程まで騒いでいた芥川が抱きついたまま急に動かなくなったのでどうしたのだろうと思っているといびきが聞こえてくる
「え?ええ!!今の一瞬で寝ちゃったの?ちょ、ちょっと芥川くん!」
(やっぱり彼は常に眠そうなイメージで合ってた…!)
無事芥川を起こしてギリギリ朝食までに戻れた羽月。
ギリギリに戻ってきたのと、疲れた顔をした羽月にどーしたと皆に聞かれたが適当に言い訳をしておく。散歩中芥川に偶然会って芥川に抱きつかれたまま寝られたなんて仁王が知ればまた大変な事になりそうだと仁王には申し訳ないと思いながら黙っておく事にした。
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「今日の練習試合のオーダーは…」
幸村が発表する前に仁王が前へ出る
「俺は昨日と同じ丸井とペアで芥川と宍戸ダブルスと戦うぜよ」
有無を言わせない発言に幸村は静かに頷き、仁王の提案したオーダーを受け入れる。
サーブ権の駆け引きは仁王、丸井ペアが勝ち取り、
緊張を解す為かさらに緊張感を張り詰める為か仁王は何度かボールをバウンドをさせ、高くボールを上げ、サーブを打つ
そこから容赦なく始まるラリー。
ボレーで攻めるジローをフォローすべく宍戸はカウンターで相手の攻撃を回避する。丸井も負けじとボレーで攻め続け、仁王もまた守りながらもタイミングあれば攻めてみる。
芥川の打球が返球しようとした丸井のラケットを抜けワンバウンドする。それをフォローしようと仁王がボールに手を伸ばすその一瞬、『試合後半、腕をあんまり伸ばさなくなっててギリギリの打球を逃しちゃったり打つ速度も落ちてる気がしたんだ。』羽月に言われた言葉が頭を過ぎり、気持ち腕を伸ばしてみる。すると打球はギリギリフレームに当たり、相手コートへポトリと落ちる。
「40-30」
やがて氷帝側のサービスもリードする仁王、丸井ペア。
「サービスブレイクだ…!マサくん頑張って」
小さく羽月は声援を送る
「なんだこいつら、昨日とはまるで別人みてーな動きしてやがる」
「くやCー!これできめられると思ったのに」
昨日より調子が良さそうな仁王に丸井は感心する。今までなら届いていなかったような打球も羽月のアドバイスにより打ち返せるようになった仁王。その後も激しい攻守が繰り広げられ、5-4のデュースとなる
「ゼームセット!ウォンバイ仁王、丸井ペア!」
最後は仁王がスマッシュを決め、宍戸、芥川は打ち返そうとするも追いつかず間をすり抜け審判の掛け声でゲームが終わる
「なんだよ、昨日のうちから本気出しとけっつーの」
「せっかく勝ったんに第一声が文句とはのう丸井」
「文句も言いたくなるっつーの!昨日無駄に巻き添いくらって…」
言い合う二人の間に羽月は慌てて入る
「ま、まあ、リベンジ出来たんだし良しとしようよ」
不満が残っているような顔しながらも「羽月君がそう言うならしょーがねーな」と丸井は溜息を吐く
「マサくん、丸井くん、お疲れ様」
「おーありがとさん」
「サンキュー」
「くやCー!あともーちょいで勝てそうだったのに!」
「くそっ、負けたなんて激ダサだな…」
羽月は悔しがる二人の元へ行く
「二人もお疲れ様。熱い、いい試合だったよ」
「ああ、ありがとな」
「羽月くーん!次は絶対かっけー姿見せるからね!」
「うん、期待してる」
「だからまた膝枕してね〜」
返答に困っているとグイっと仁王に肩を抱き寄せられる
「悪いのう、こいつは俺のもんじゃき、それは許可できんぜよ」
それを聞いた宍戸は驚き、芥川は何故かテンションがあがる
「え!それってオメーら付き合ってるって事!?」
「プリッ」
「まじまじスッゲーー!」
「おいおいその辺にしとけ、お前の恋人恥ずかしさで目回してんぞ」
宍戸の発言にみんな羽月を見ると「お、俺ほかの試合見に行ってくる!」と脱兎の如く、その場を離れる。それに続き幸村と真田に報告しようと仁王と丸井もその場を離れる
「またねー!羽月くん!!」
振り返り、にこりと笑い手を振る羽月
「俺らも跡部に報告しに行くぞ」
「先越されちゃってたかー残念」
「あ?なんか言ったかよジロー」
「別に〜試合終わって気が抜けたら眠くなった」
「お、おい!寝るな!」
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帰りのバスは疲れ切ってほとんどみんな寝ていた。
学校へ到着し、細かいミーティングは後日するということでまずは身体を休めるようにと早々に解散になりそれぞれ帰路へつく
「一週間お疲れ様」
「空風もマネージャー業おつかれさん」
「貴重な体験が出来て楽しかったよ」
「アドバイスまでしてくれて感謝するぜよ。今日の試合は間違いなくお前さんのおかげで勝てたナリ」
普段素直じゃない仁王にまっすぐな目で感謝を伝えられ羽月は照れ臭くなる
「俺のおかげだなんて、マサくんと丸井くんの実力だよ」
照れ臭そうに眉を下げながら笑う羽月に仁王は頭を撫でる
「この合宿、色々あったのう」
「そうだね、悪い事もいい事も。でも今じゃ全部いい思い出だよ」
「そうじゃのう」
「合宿の間もみんなと、マサくんと過ごせて楽しかった」
「俺も、合宿憂鬱やったけど、空風がマネージャーやってくれて退屈しなかったぜよ」
いつの間か到着した分かれ道。立ち止まり自然とお互い向き合う
「身体、ゆっくり休めてねマサくん」
「空風もな」
「じゃあね」
にこりと笑い自分の帰り道に向かい方向転換した羽月の腕を仁王は掴み、歩き出そうとしていた足を止めて振り返ると夕焼けに染まる瞳に見つめられる
「……………」
仁王は何も言わないが羽月はこの瞳を知っている。自分を求める仁王の熱い瞳、それに応えるべく歩み寄り、仁王の身長に合わせ背伸びをする。
合宿編完
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