[携帯モード] [URL送信]

long(RIKKAI@)
ペテン師と騙せない想い








仁王雅治は休み時間に今まで通りF組へ行こうとしていたが、最近は目当ての羽月空風の姿がないので最初こそ探し回っていたが今じゃ一人屋上で時間を潰している。屋上へ向かい立入禁止とある文字を無視し壊れた鍵の扉を開き、フェンスを乗り越え腰を下ろす


澄んだ空

暑苦しい気温

思い出の場所





「ねえ、君」




柳に言われた通り屋上へ来た羽月は銀髪の彼の姿を見つけ緊張しながらも声を掛ける。
声をかけられた仁王は振り返るとずっと探し求めていた今じゃもう見慣れたその姿に愛しさが込み上げる




「いけないなあ、立ち入り禁止の屋上に入っちゃ」




出会った頃を思い出し羽月はふわりと笑いながらあの日の仁王と同じ事を言ってみると仁王は一瞬驚いた顔をしたが笑い返す




「それはお互い様じゃろ?」




仁王も同じ事を言ってみせる




「フフッ、それはそうだね。
それにしてもフェンスを越えてそんな所危ないでしょ」




そう言いながらフェンスを越え隣に立つ




「おー、やっぱりここからの眺めはいいねー」



「ああ、お気に入りの場所ぜよ、ここは」



「……あー、ここで予鈴鳴れば完璧だったのにね」



「休み時間は始まったばっかぜよ。まあそううまくはいかんだろうなあ」




「アハハ残念」と笑う羽月。
しばらくの沈黙が流れ再び羽月が口を開ける




「俺も、お気に入りの場所だよここは。それに…思い出のある場所だ。君と出会えた大切な思い出の場所」




空を見上げている仁王の隣に腰を掛け一緒に空を眺める




「空風…」




隣に座り空を眺める羽月に戸惑いながらも隣の愛しい横顔を見つめる




「最近、避けるようなことしちゃってごめんね。気持ちに整理つかなくて」



「ええんよ、俺が悪いんやし」



「耳を塞いで告白してくれたあの日、その後マサくんは今まで通り接してたから友達のままでいいんだと思ってた。けど、この前キスされて友達として見れないって言われて俺はどうすればいいのか分からなかった。俺にとってマサくんは大切な友達だと思ってたから」



「そうだろうなあ……」



「それでね、精市くんや蓮二くんに相談して分かったんだ」




羽月の言葉の続きを聞くために
また空を見上げ黙って次を待つ仁王はこの前に比べていやに冷静だった。
勝算があったわけでも空風は自分を選ぶと自信があったわけでもない。しかしあの時体と口は勝手に動き、自分の気持ちを伝えずにはいられなかった。自分の勝手な行動で羽月を散々困らせてしまったのでこの先何を言われても後悔しないと決めている。

羽月は深く息を吸う




「俺も君が好き」




予想外な羽月の言葉に驚き羽月を見るとにこりといつもの柔らかい笑顔をくれる




「多分これは友達としてじゃないと思う。けど、完全にそうなのかまだ分からないから気持ち確かめるためにキスしても…」




言い終える前に唇が重なる。
後ろ髪を抑え角度を変え長いキスをするとそれに応えるように羽月は首に抱きつく




「どうじゃ、嫌やないか?」




唇を離し最後に短いキスをし問いかける




「うん、嫌じゃない。嬉しい」




嬉しそうに笑う羽月を強く抱きしめるとお互いの鼓動音が伝わって来てさらに愛しさが込み上げる




「マサくんすごいドキドキしてる…」



「空風もな」




えへへと笑う羽月の頭を抱えるように撫でる




「絶対幸せにする」



「充分幸せもらってるよ」



「好き、好きじゃ空風」



「俺も。マサくんのこと好き」




時間が許す限り二人が出会ったこの場所で愛を確かめ合っていた。
予鈴が鳴り、仁王がこのまま授業サボるかと言ったら怒られたので羽月を教室へ送り仁王も大人しく教室へ戻った。




「羽月くんと何かあったろぃ。あからさま機嫌良くなりすぎ」



「分かる?空風は俺の恋人になったんよ。喜ばずにはいられないぜよ」




丸井は大きな声を上げていたが無視し仁王は自分の席に着く。


なんの接点も無かった俺たちが出会ってそして俺はあいつに恋をする。あいつ次第で機嫌が良くなったり悪くなったり、あいつに心を振り回される。付き合ったこれからもきっとそれは変わらない。

ペテン師にも騙せない想いがあるってもんナリ













[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!