long(RIKKAI@)
掴めない手と心
《side仁王》
部活終わり、いつも通り図書室で待っている空風の元へ向かう
ガラリと中へ入っても腕を組み机に伏したままの空風は俺の存在に気がつかない。近づいて顔を覗き込むと空風はやはり眠っていた。
「空風」と名前を呼び、指で黒い髪を梳いてみても起きる気配はないので下校時間になるまで寝かせておくことにしようと今まで空風が見ていたであろう本を見てみる
パラパラーとページをめくってみたものの、ただ字がならんでいるだけで読む気になれず活字と空風の顔を交互に見る。
柳ならこーゆー本の話題で盛り上がったりするのだろうかと考え、すぐにその考えをやめる
(我ながら女々しいナリ)
本を閉じ、空風の顔にかかる髪をどけてやり薄く開かれた唇へ目が行く
こいつのことを恋愛対象として好きだと気付かされた矢先に無防備な姿を見てしまうとどうにかしてしまいたくなる。
幸村が言っていた。空風は俺からのキスは嫌じゃないと、それならもう一度…
空風が「んー…」と小さく呻き我に帰る。
「空風?」
「ん、ごめん寝ちゃってたー」
起き上がり、眠そうに目をこすりながら伸びをする
「いや、いいんよ。おはよーさん」
「うん、おはよー」
にこりと挨拶をしてくれる
あー、しんどいぜよ。
気持ちを誤魔化すように目の前の頭をわしゃわしゃと撫でると目を細めまた笑いかけてくれる
「マサくん部活お疲れ様」
ちなみにこいつのこの呼び方は下の名前で呼び合った次の日の朝、頑張って空風が前の日にしたみたく俺の名前を呼ぼうとするも顔を真っ赤にしてなかなか呼べない空風に「今まで通り呼びやすいように呼びんしゃい」と言ったら「マサくん…」と眉を下げ恥ずかしそうに小さく呟いていたのでその日からそう呼ばせている。言うまでもなくその時の空風は最高に可愛かった
「おう、ありがとな。今度県大会があるんじゃが、来るか?」
「え?いいの?すっごく観に行きたい!」
目を輝かせ大きく頷く空風に「楽しみにしときんしゃい」と微笑みお互い帰る支度をする
空風、おまんは俺の気持ちを知ったらどー思うんかのう
軽蔑するか?今まで通り接してくれるか?
もし、もしも空風も俺と同じ気持ちで受け入れてくれるなら…なんて考えるのは阿呆らしいか?
隣に歩く空風の触れそうで触れない手を今日も掴めずにいる
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