long(RIKKAI@)
目撃と勘違い
《side切原》
補習からやっと解放され帰ろうと廊下を歩いていると向こうから黒髪のすらっとした人が歩いてくる
「やあ、君は切原くんだよね?」
確かこの人は仁王先輩のお気に入りの人だ。
いや、気に入ってるだけじゃない。この前部活終わり忘れ物を取りに行こうと図書室の前を通ったら人影が二つあり、仁王先輩と羽月さんだと認識する。
なんと二人がキスしているところを俺は見てしまったのだ。
「あ、羽月さんウィッス」
なんとなく気まずく思ってしまうのも無理はない
「居残りかい?」
「は、はい。英語の補習が…」
「英語か、俺得意だから今度教えようか?」
「まじっすか?ぜひお願いしたいっす!うちの先輩たち人に勉強教えるのに向いてない人ばっかなんすよ」
「そうなの?柳くんに教えてもらった時は分かりやすかったけどなあ」
「俺には柳先輩の回りくどい言い回しは余計頭がこんがらがって理解出来ないんすよ」
「真田くんとか柳生くんは?」
「それが、なんでこんなことも分からないんだーって説教ばっかで勉強どころじゃなくなるんすよ」
「フフッ、それは気の毒に。じゃあ俺はその分優しく教えてあげようかな」
「これから羽月さんにお願いするっす」
アハハと笑う羽月さん
あの仁王先輩とつるんでるから難しい人かと思ってたけど、案外話しやすい人で安心する
「羽月さんって苦手な科目とかなさそうっすよね」
「そんなことないよ、数学とかは絶望的に苦手。でも最近は仁王くんが教えてくれるからやっと平均くらいにはなったかな」
仁王先輩の名前が出てどきりとする
「あの……」
ん?と首を傾げる羽月さん
「羽月さんは…その、仁王先輩と…つ、付き合ってるんすか?」
つ、ついに聞いてしまった
羽月さんは驚いた顔をする
「どうしてそう思ったのかな?」
「その、俺先輩達が図書室でキ、キ、キスしてるとこ見ちまいまして…」
「うん、したね」
焦る様子もなく答えられ、こっちが焦る
「えっ、じゃあやっぱり…」
不敵な笑みで笑われドキドキする
「残念ながら君が思ってるような関係ではないよ。俺と仁王くんは友達」
「じゃああのキスは…がっつり舌入ってたっすよ!」
「君、結構しっかり見てたんだね。あれは仁王くんが飴欲しかったらしくて俺が舐めてるのを取られちゃったんだ」
思い出したようにクスクス笑う
飴欲しいだけで野郎にキスしようなんて思わないが、
もしかして仁王先輩って…
「仁王くんって結構いたずらっ子だよね」
「先輩、今更っす。それに、いたずらっ子なんてそんな可愛いもんじゃないっすよ」
「そうかな?たまにわがままなとこあるけど優しいと思うよ」
「それは多分羽月さん限定っすよ」
「フフッそんなことないと思うけど。それじゃあその仁王くんを待たせてるから俺は行くね。またね切原くん」
「はい。またっす!」
ふわりと笑い、ひらひらと手を振り遠くなる後ろ姿
仁王先輩の気持ちに全く気づく気配のない羽月さん、仁王先輩お気の毒っす…
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