long(RIKKAI@)
本と価値観
《side柳》
4限目の自習時。周りは自由に話し始めている中、俺はとゆうと話しかけて来る生徒たちを軽くかわしていき、一人で本を読んでいる彼の席へ向かう
「羽月、隣いいか?」
真剣な表情だった羽月の顔がいつもの柔らかい笑顔で俺を迎え入れ本を閉じる
「どうぞ、柳くん」
「読書の邪魔をしてしまったかな?」
「ううん、キリのいいとこだったから。それに俺も柳くんと話したいし」
前から思っていたが羽月は相手に気を使わせない返しが出来る奴だと思う。だからこそ一緒にいて苦にならず、こいつと話していると心地よい
「何の本だ?」
「わ、笑わないでよ?」
「?」
恥ずかしそうに表紙を見せる
そこには二匹の鳥が藍色の星空を飛んでいる絵に見たことのない題名の本
「初めて見るな」
「そりゃそうだよ、あんま男の人が読むようなもんじゃないもん」
男があまり読まない?
「恋愛小説か?」
俯き顔を赤くする羽月
どうやら当たりのようだ
「羽月は恋愛小説が好きなのか?」
「ち、違くて、最初本屋で冒頭パラパラーって見た時は心理哲学についての物だと思ったんだよ」
「それで、面白そうだから買って読み進んでいたら恋愛物だったと」
小さく笑うと笑わないでよーと拗ねる羽月に悪い悪いと謝る
「まあ、心理哲学には変わりないんじゃないか?」
「そうだね、読み進めていくうちに俺も結構話にのめり込んでいっちゃったよ」
「どんな内容なんだ?」
「んーとね、主人公がある時感情を読み取れてしまう女性と出会って恋に落ちるんだけど、女性のその力は周りから不気味がられてて一緒にいない方がいいって言う彼女に対して主人公は世間の目を気にするか彼女を選ぶかって感じかな」
「なるほど、なかなか面白そうだな。」
世間の目か…
「お前はもし、好きな人が出来てそれが周りの目を気にしなければならない恋だとしたらどうする?」
「うーん、すごく悩むね。もちろん世間からの目は大事だし…けど好きになっちゃったもんはしょうがないよ!周りにどう思われたって自分とその人の問題なんだから、お互いがそれで幸せならそれでよし。俺はまだ恋とかしたことがないけど、人を好きになるってそーゆーもんじゃないかなあ」
ここまで真っ直ぐな答えが出せる奴がいるのかと驚くのと同時にまだ恋したことがないとゆう言葉にも驚いたが、自信たっぷりに答える羽月に対して、「ああ、その通りだな」と微笑み答えると彼もえへへと照れたように笑う
「その本、読み終わったら貸してもらえないだろうか?俺も興味が湧いた」
「うん、きっと柳くんも気に入るよ」
その後は羽月に勉強を教えてと頼まれ教えていた。しばらくしてチャイムが鳴り、いつものように仁王が羽月を迎えに来る。
俺が羽月の隣にいたので一瞬眉をしかめたが、すぐに羽月を掻っ攫うように去って行く
『好きになっちゃったもんはしょうがない』か…
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