03 あまのじゃく なるほど。通りでこの人モテるはずやわ。しかし周りの視線が痛い… 「どないしたん?」 「………」 今うちの隣を歩いているのは、学年一。いや、学校一と言っても過言ではないくらいモテる白石蔵ノ介。 「いや。わざわざ悪いなあ思うて」 「そんなん気にせんでええのに」 あ。ほら。その笑顔に女子はやられるんですよ白石さん。まあ、本人はそんなん気にせんと笑うてるんやろうけど。 なぜうちが今、クラスも違うなんの接点もない白石くんと並んで歩いているのかと言うと、それは数十分前に遡る。 「ほなら一氏、瀬野。授業終わったら職員室来てな」 「「え!なんで!?」」 「なんでてなあ…お前ら毎回毎回授業中うっさいんじゃ!!罰として昼休み、教材運ぶん手伝え!!」 「なに言うてはるんですか先生!」 「せや!いっつもやかましいしてんの、こいつやないか!!」 「…ちょお一氏。今の聞き捨てられへんな」 「ホンマのこと言うただけやないかい」 「あんなあ!毎日毎日授業中に『小春』『小春』て隣から聞こえて授業集中でけへんうちの身にもなってえや!!」 「ハッ、授業集中て…お前こそ白眼剥き出しのまま眠るんやめろや!それこそ集中できへんっちゅーねん!!」 「うち白眼剥いて寝てませんー」 「寝てますー」 「寝てませんー」 「寝てますー」 「寝てませんー」 「寝てま…」 「お前らええ加減にせえ!!!!!」 と、いう訳で。うちと一氏は昼休み教材を取りに職員室に行ったわけやけども、一氏はテニス部顧問のオサムちゃんに呼ばれて、その場におった白石くんが呼ばれた一氏の代わりに教材運ぶん手伝ってくれたっちゅーわけや。 「しかし意外やわ」 「?」 階段を登る途中、白石くんが遅れをとるうちを振り返って言うた。 「ユウジと張り合える女子がおるなんてなあ」 「…………」 …それは褒め言葉として受け取ってええんでしょうか。 「張り合うっちゅーか、もう幼稚園児のレベルやで」 「けど、毎日楽しい言いよんで」 「え?」 びっくりした。まさか一氏が、そんなこと思うてたやなんて。…なんや、なんか嬉しい…。 「小春が」 「…………」 あ。小春ちゃん、ね。 そらそうや。あのツンツン男がそないなこと言うわけあらへん。なにを期待してんねん、うち。 ……………。 いやいやいや。別に期待しとったわけちゃうけど。うん。ちゃうちゃう。今のなし。 「着いたで」 「あ、ホンマや。おおきに白石くん」 ようやくの思いで教室に着き、白石くんは持っていた大半の教材を教卓に置くと、ええよ、と笑顔で言うた。ああ、ホンマええ人やなあ白石くん。モテるん分かるわあ(本日二度目) 「ほな、ユウジによろしゅうな」 そう言って白石くんは教室を去って行きました。ああヤバい。後ろ姿までもが王子様に見える。 …あ。一氏や。 白石くんの向かう方向から、一氏が歩いて来るのが見えた。 あ〜あ。でっかい欠伸なんかして…白石くんとは大違いやな。背中も丸まってんし。もうちょいピシッとしいや。 「…………」 って、自分一氏見すぎやっちゅーねん。 あまのじゃく (おお、ユウジ)(白石)(でっかい欠伸やなあ)(ほっとけ) 前へ次へ |