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短編
2
その一言に宮前さんの動きが止まる。
気怠げだった美しい瞳がまんまるに見開いた。
その様子もやはり美麗でいいなと思いながら綺麗ですともう一度呟くと宮前さんの瞳がうっそりと愉快げに細まる。
子供が新しい玩具を手に入れた時のようにおもしろそうに此方を見た宮前さんに名前は、と聞かれた気がしたが言いたい事だけ言い終えた俺は、もう其処に居る意味もなかったのでその場を後に部屋に向かった。

いいな。
あの人をガラスケースにでも入れて何時までも眺めていられたらいいのに。

でも姉が死んだらあの人は家に来ない訳だからさっきのが見納めか。
もう少し眺めておけば良かった。しくじったな。

思いながらネクタイを緩め制服を脱ぎ背中からベットに倒れ込む。

瞼の裏に焼き付いた美貌の男の端麗さを反芻しながら、俺は眠りについた。


それが宮前さんとの出会い。



******




「とっおっるくーん。宮前さんとあっそびっましょー」

「いつも思うんですけど…尻撫でながら言う事に何か意味はあるんですか?」

「挨拶だっつの。それよかこっち向けよ」


あの日以来、宮前さんは俺によく構う。
あの後結局宮前さんに止められた姉を見事なまでに宮前さんは振ったらしいのだが、家には頻繁に出入りするようになった。

また綺麗な宮前さんを拝める事自体は嬉しかったので二度目に宮前さんと遭遇(というよりも部屋に向かう途中で呼び止められただけだが)した時に素直にそう告げ、ガラスケースに入れたいと感じた旨まで伝えると、宮前さんはおよそ容姿に似つかわしくない馬鹿笑いを上げながら『お前やっぱりおもしろいよなぁ』と笑った。


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あきゅろす。
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