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The flower of Eden
No.3 光を纏う少年


暗い世界で出会ったのは、金の髪をした不思議な少年だった



《君の話を聞かせてよ!》



彼をーーイグニスくんの印象を一言で表すなら、太陽と言う言葉が合っていると思う


明るくて、暖かくて、眩い光




今の私に彼の光は少し、眩しかった




《君の名前はなんていうの?》


『私の名前、ですか?』


私の隣に腰を下ろすイグニスくん
(そもそも何故私たちは浮いていられるのだろうか……)


『私は夏目といいます』

《ナツメ……ナツメ……

うん、覚えたよ!》


にっこりと笑うイグニスくんを、少しだけ血の繋がらない弟たちと重ねてしまった


《ナツメ、かぁ……
良い名前だね!》

『そうですか?
ありがとうございます、イグニスくん』


私も彼に笑みを返す


《ナツメはなんでこんなところにいるの?》

『なんで……といわれましても……
気がついたらここにいたもので、詳しくは』


それ以外に説明の仕様もないし、それまで何があったのかなど話しても信じてはくれないだろう


『イグニスくんこそ、どうしてここにいるんですか?』


《俺はここから外にでるのを待っているのさ

世界が俺を必要とするまでね》



一瞬だけ、この子中2病?と思う自分がいました。



《俺の役目はこの世界、グラニデに平和をもたらすこと

それがディセンダーの役目だからさ》


『グラニデ
ディセンダー??』


彼の口から聞きなれない単語が飛び出す


《知らない?》


きょとん、とするイグニスくん


『ええ……と、イグニスくん
ひとつお尋ねしたいんですが……


ここってどこですか?』

《世界樹の中さ!》

『狽ヌこ!!!?』


その後、自分の元いた場所…つまり地球のことを一部要約しながら彼に話す


《そっか……
ナツメの世界に世界樹はないのか…


あ、じゃあそれってつまり、ナツメは異世界から来たってこと?》


『そ、そうなりますね……』


にわかには信じられないが、自分の中の「血」が真実だと叫び続ける


『(そして、みんなを死なせてしまったのも真実……)』


罪悪感ばかりが頭をよぎる


顔を俯かせていると、頭の上に温もりが乗った


《悲しんでばかりじゃダメだ
辛いときこそ笑わなくちゃ》


顔をあげれば、微笑むイグニスくんが私の頭を撫でていた


『イグニスくん……』


じわり、と目頭が熱くなる


『あなたの手は、暖かいですね……』


この手とよく似た手を持つ人を、私は知っている

今はもうどこにもいないその人を思い浮かべ、さらに熱くなる


《……あ……》


『……?

わ……!?』


私の体が、ふわりと宙に浮く


《どうやら世界樹が君を呼んでるみたいだ

一旦お別れだよ、ナツメ》


『イグニスく……』


どんどん上昇する私の両手を、彼が握りしめる


《大丈夫

必ずナツメに会いに行くから》


イグニスくんは優しく微笑むと、ぱっと両手を離した


彼の姿がどんどん、どんどん小さくなっていく


私の体は、まばゆい光に包まれた



《Arrivederci》



遠退く意識のなかで、聞きなれた言葉を聞いた気がした



+++++



曖昧な意識が浮上する


瞼をうっすらと開き、二、三度瞬きを繰り返した


数分の時間をかけ、脳が覚醒し始める


『…………どこ、?』


寝起き特有のかすれた声で呟いた


いつの間にか私は見慣れない部屋のベッドに横たわっていた


「気がついたんだ!よかったァ……」


不意に、知らない声が聞こえた


首だけをそちらへむけると、緑色の短髪をした女の子が立っていた


「ホントによかった……
あなた、波打ち際に倒れてたのよ?」

『あの……?』

「あ……
自己紹介がまだだったよね
私はファラ
ファラ・エルステッド!

あなたの名前は?」


『私はさわ、』


もとの名前を名乗りそうになり、口をつむぐ


イグニスくんと出会ったあの世界で、ここは異世界なのだと聞かされた


なら、

この名前も記憶もすべて忘れてしまおうと決めた




『私の、名前はーーー』




私は逃げる




『ナツメ、アマルティア』



罪悪感から、苦しみから



私は、目を背けた





〔ごめんね、さようなら〕
To be continue ……


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