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[前]雲色の願い
4



「恭樺」


名前を呼ばれた。恭弥君を見れば
彼は、優しい顔で、僕に言ってくれた。


恭樺は恭樺でしかなくて、僕にはなれない。だけど、恭樺にしか出来ない事もある。恭樺は恭樺にしか出来ない事を、精一杯やれば良いんだ。無理に僕にならなくても良い。恭樺は、恭樺なのだから




***




恭弥君は、知っていた。
僕が゙雲雀恭弥゙と言う存在に頭を悩ませている事を。
それを…彼はあの言葉だけで、僕を楽にさせてくれた。

今の僕がここにあるのは
恭弥君のおかげだ。


「恭弥君」

「何」

「…ありがとう」



゙雲雀恭弥゙じゃ、言わない言葉。
゙雲雀恭樺゙だから、言えた言葉。


恭弥君は笑顔で、帰ろう、と言った。
夏の夜は、冷えた。

僕は彼の手を掴み、絡めた。







(どうしたの、急に)

(なんとなくだよ)

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