[前]夜空舞う、銀の蝶 2 ぎゅっ…と握る手に力がこもる。 「…怖い、なんて…いつぶりだろ…」 この世界に来て、ツナ達と出会って、マフィアの闇を見て……… この世界に来てから、いろんな事があった。 …今、何に恐怖を抱いているのか 自分でもわからない。 ……もしかして 未来に、恐怖している? この、目と鼻の先にある幸せがなくなるのが、怖いのか。 「…なんで…こんなに…なっちゃったんだろ…」 「…ん」 先輩の声にハッとしたが、遅かった。 先輩の目はパチッと開き、腕がこちらに伸びてきた。 殺られる! そう思ったが、感じたのは いつぞやの、あの温もりだった。 いや、あの日より、熱い。 「…何が、怖いの?」 「!………」 先輩の声は弱々しかった。 腕に力もない。 簡単に振りほどける そう思った。 だけど、私にも、抵抗する力がなかった。 返事なんて、出来ない。 ぎゅっと先輩の服を掴む。 先輩は驚いたように肩を震わせたが、腕に無い筈の力を込めて、ゆっくりと頭を撫でた。 (涙は出さない) (でも………) [*前へ][次へ#] [戻る] |