[前]夜空舞う、銀の蝶
3
「それにひきかえ、オレなんてバカの一つ覚えみたいに野球しかやってねーや」
「なっ、何言ってんだよ
山本はその野球がすごいじゃないか」
「そうだよ。私は、何か一つでも頑張ってる事があるのは良いと思うよ?」
そう言えば、サンキュ、と少し顔を赤くし、笑顔で答えた。
武君は最近野球が上手くいってない事を話した。
初のスタメン落ちかもしれないらしい。
そんな武君の力になりたい。
でも…どうすれば良いか、わからない…
…私には、どうする事も
出来ないのかな…
…ツナにどうすれば良いか聞いた武君。ツナは驚きの声をあげた。
だけど
すぐにいつもの表情に変わった。
…ツナも、私と同じ考えをしてるみたい。
武君のあんな顔…初めてみたから…
どうにかしたいって、思う。
ツナは目を泳がせながら、努力しかないんじゃないかな、と言った。
武君は、オレもそう思ってた、と言ってツナと肩を抱き合っていた。
「お〜し 今日は居残ってガンガン練習すっぞーっ」
───「武君」
「ん?どうした?」
「…あんまり、無理…しないでね?」
私の目を見て、なんでだ?と返してきた。
私は、努力し過ぎだからスランプなのかもよ、と言った。
「リフレッシュ期間が必要なんだよ」
「…そか。ありがとな、蝶」
ううん、と言って武君に手を振った。
私達はバイバイと手を振り合った。
…武君の背中を見て、不意に変な予感が走った。
なにか…大事な事を忘れているような…
(嫌な)
(予感がする)
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