[前]夜空舞う、銀の蝶
オモイ
────温かい……
手から、体から。
じんわりと伝わってくる。
重い瞼をゆっくりと上げる。
目の前には、黒。
「…だぁ…れ……」
空いている指先で何かに触れる。
あぁ…先輩だ……
指先を少しずつ動かして頬に触れた。
ずっと、抱き締めてくれたんですか…?
肩には先輩の学ランがかかっていた。
夏って言っても、ここは夜になると冷える。
先輩、風邪ひかないで下さいね……
そう思い、体を寄せた。
ガシッ。
「……?」
頬に触れていた手が掴まれた。先輩の手で。
「先、輩……」
なんだか、先輩を見てホッとした。
少し口元を綻ばせる。
「──君はいつも」
…?
「いつも、人の理性をすぐ壊す」
上手だよね、そういうの。
──気付いたら先輩の顔が目の前にあって。
目が合うと、心音が早くなる。
重なった唇から伝わる熱で、少し体が震えた。
「ん…っ……く……」
なんで。
(なんで)
(こんなに愛しいのだろう)
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