[前]夜空舞う、銀の蝶
6
「せん、ぱ…い……」
必死に伸ばされた手を取れない。
悠嘉の顔は、切ない笑みを浮かべていた。
「最初から…わかってた」
「!!?」
腕の重みに気付く。
そうだ。この娘はここに居る。
そう感じた瞬間、
世界が音を立てて崩れ去った。
「今のは……」
なんだ?
まさか、悠嘉の夢?
そうしたら、なぜ僕まで世界に巻き込まれた。
それ以上に、なぜ世界が広がった?
これは自分の夢なんじゃないか。その考えも頭を過ぎったが、悠嘉の温もりと重さで嫌と言う程現実だとわかる。
悠嘉の頭に置いた手に力を込め、呟いた。
「君は…
幾つの嘘と、幾つの隠し事と、幾つの苦しみと、───幾つの悲しみを背負ってるんだい?」
少し体を放して、自分の額を悠嘉の額に重ねた。
────あぁ。
こんな事で
(悠嘉が)
(少しでも楽になれば良いのに)
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