[前]夜空舞う、銀の蝶
5
少女から、温もりが消えていく。
少女は自分が消えいく事を実感した。
凪を地面に降ろし、目線を合わせる。
「凪、凪」
「悠嘉…?」
「凪。私は、もうここには来れないの」
なんでかわかる?
凪は小さく首を横に振る。
そして、蝶を見れば驚いた。
…蝶が、元の姿に戻りかけていたからである。
「私はね、この時代にいない人間だから」
「…悠嘉は、夢じゃないんでしょ…?」
うん、と頷く。
「私は凪の夢の産物じゃない
…私は、8年後から来たの」
「…未来?」
「そう。未来
私はこの時代の私と入れ替わって来たの。だから、そろそろここの私に返してあげなきゃ」
蝶を見ながら、涙を堪える凪。
自分より小さな凪を抱え込む。
すっぽりと収まる小さな子に笑いかける。
「泣かないで、凪
大丈夫。これが最後じゃない。少し、長い時間だけど、待っていれば会えるから」
だから、
「私の事を覚えていて」
すぅ…、と蝶が霧がかかった様に消えていった…────
(絶対に忘れない。だから)
(私の事も忘れないでね)
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