[前]夜空舞う、銀の蝶
2
「隼人君、早いね」
「わっ!!!」
ひょっと視界に入ってきたのは、蝶。
蝶は不思議そうに俺の顔をまじまじと見た。
……っつーか
顔、近ぇ!!!
蝶の肩を押して離れる。
熱の集まる顔を隠しながら、行くぞ、と蝶の手をひいて行った。
(…なんだ、この気持ち…)
(どうしたんだろう?)
*
蝶は目を輝かせていた。
「…珍しいか、そんなに」
「いや…来た事、ないから」
……やべぇ、地雷踏んだか?
さっきまで輝いていた瞳が曇った。
どことなく下を見つめている。
「…私、家族いないから…」
ぽつり、と呟く。
独り言か、俺に言っているのかわからない呟きだった。
悲しそうにする蝶に、言ってやった。
「俺の方はもっとドロドロだぜ」
と。
蝶は、少し笑顔になって
ありがとう、と言った。
その時の笑顔は、すげぇ綺麗だった。
*
「あ」
「なんだ?」
「馬だよ馬!!」
(はしゃいだ)
(子供)
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