[前]夜空舞う、銀の蝶
誕生日
***
「ほら悠嘉、ふぅーってやるのよ」
「ふぅー?」
「そうよ、ほらふー…」
「フゥー!!」
少女の目の前にはワンホールのケーキ。
右には母親。
左には誰もいない。
それでも、幸せな家庭。
少女には、火を消した後
小さな箱が渡される。その中身は、母にとってとても大切なモノ。
でも、少女にそれが渡る事はなかった。
──幸せな家庭に土足で入ってきた輩によって、母は赤に染まり
少女は
壊れてしまった…
***
「…」
冬休み。
外はクリスマスでいっぱいだ。
彼女は空を見上げていた。
どこか、懐かしむような瞳で。
屋根から脚を放り出しながら、彼女は手を伸ばす。届くはずの無い、メッセージを受け取る為に。
────今日は
クリスマス前日であり
同時に、
彼女の生まれた日であった。
「…ごめんなさい」
彼女は、この日は必ず謝る。
(何故かは)
(誰にもわからない)
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