[前]夜空舞う、銀の蝶
6
「何があったのかは…わからない」
「…」
家光は静かに九代目の話を聞いている。
「ただ…少女は暴走していた。ストッパーが外れたのだろう…
そして、その暴走を止めたのは、ヴァリアーの、小さな子だった」
「!?…小、さな?」
「あぁ、4歳で入ってな。今は…蝶ちゃんと同じで5歳だよ」
4歳でヴァリアー…
マーモンと言う赤ん坊を抜かせば、最年少となる歳だ。
そんな子が…
「その子にしか、止められない暴走だ」
…その子にしか、止められない…
まず、蝶が暴走したのが考えられない。
この娘が…人殺し…
しかも、大人を…殺した。
…無理だ。有り得ない。
いつも奈々や綱吉、ましてや、たまにしか家に帰らない自分の事まで心配して、
皆を守りたいと願ってる娘だ。
そんな事、出来るわけがない。
「家光。これは、事実だ」
「!…」
家光は横でスヤスヤと眠る小さな少女を見て、頭を撫でた。
「んにゃ…」
「!」
蝶がムクリと起き上がったので、驚く家光。
さっきの話を聞いたから、尚更ビビる。
───…だが、
九代目の話がなんだと言うのだ。
蝶は蝶だ。
自分の知ってる蝶は、
心優しい、小さな少女だ。
さっきの話を、気にしてはいけない。
いつも通り…接すれば良い。
小さな娘は、大きな嵐を巻起こすだろう。
それなら、オレが騎士(ナイト)になろう。
オレが、この娘を…
守ってやる。
(おはよう蝶ちゃん!!)
(…家光さん、抱き付かないで下さい…)
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