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遊戯王GX  −Selfish−
第2話 E・HERO vs ライトロード A


 天馬 司のデュエルが終わった後、しばらく会場は静まり返っていた。

 勿論私もその一人。

 飛び降りて会場に向かった事もそうだし、たった今行った1ターンキルも、全てが破天荒に見えた。

 あの自信からして負けるとは思っていなかったけれど、まさか1ターンキルをするなんて思っていなかった。

 110番の子といい、天馬 司といい、今年の入学生はかなり面白そう。








 第2話『E・HERO vs ライトロード』








 入学式直前、俺は校長室に居た。

 初めてこの話を聞いた時から思ってたが、何でこうなったんだろうな……。



「入学試験はどうでしたか?」

「筆記は、まぁ問題ないが……実技は現時点では評価最悪だな」



 思ったままを答えたんだが、鮫島校長は苦笑しているな。

 まぁ、自分のところの部下にこんな評価されたらこんな顔するだろ。



「俺がした評価も、あんまりアテにならないって感じかな?」

「いえいえ、ちゃんとレポートも提出されましたし、中身も私が期待した通りでしたよ。

 これからもアテにさせていただきますよ。」



 どうだか……。

 しっかし、どうしてこうなったんだっけ?






「マイブラザー司、あなたにはデュエルアカデミアに行って欲しいのデス」



 アレは入学筆記試験の1週間前の昼だ。

 ペガサスさんに呼び出されたと思ったら、いきなりそんな事を言われた。



「ペガサスさん、ソレってどういう事?」

「実は鮫島校長から頼まれたのデース」



 まぁ、話を簡単に纏めるとだ。


 デュエルアカデミアの質が落ちてる。

    ↓

 ここらで学園に刺激と指摘してくれる人材が欲しい。

    ↓

 その事を鮫島校長はペガサスさんに相談。

    ↓

 そこで俺を選んだ。


 いや、なんで俺なの?



「あなたは私の教え子の中で現在bPの実力デース。

 しかし、ソレはあくまで私の教え子の中だけなのデス!

 このあたりで世界を見てきて欲しいのデース」

「言いたい事は分ったけど、俺はまだまだ未熟だぜ?

 そんな俺が評価して良いの?」

「構わないのデス。むしろあなたのようなデュエリストの方がイイでしょうネ」



 これは褒められてんのか?

 それとも貶されてんのか?



「あなたはデュエルを楽しミ、かつカナリの実力を持ってマース。

 それこそ、このまま行けばアノ決闘王 武藤 遊戯にもいずれ追い付くでしょう」

「そう言ってくれんのは嬉しいけど、まだまだあの人に追い付くとは思えないなぁ……」



 大体、それってペガサスさんを超えるって事だろ?

 う〜ん……難しくない?



「とりあえず、入学試験を受けて来て下サイ。

 大丈夫とは思いマスが、万ガ一にも落ちてしまう可能性もアリ得るのデス」



 やっぱり馬鹿にされてるとしか思えん。

 大体、入試試験なんて落ちる訳無いだろ。



「ペガサスさんに師事してもらっといて、落ちる訳無いでしょ。

 俺等が入試位受からん事の方が問題アリで、落ちるとしたらワザとしか無い」

「ならば合格してきて下サイ。

 落ちたら破門にシマース」




 はああああああ???






 てな訳で現在に至ると……。

 何回思い出しても理不尽だと思うんだが……まぁ、育てて貰った恩を返すと思えば我慢できるか。



「しかし、良かったのですか?」

「なにが?」

「貴方の所属ですよ。オシリス・レッドで良かったのですか?」



 そう言われ改めて自分の姿を見渡す。

 実は条件として特注で真紅の制服を作らせて、それを通常の制服として俺は着ている。

 嫌々とは言え学生になったんだ。制服を着なければ流石に問題が発生する。

 ただし、通常のレッドの制服では物足りん。

 そこでいつも着ているコートとレッドの制服を混ぜたようなデザインを提出し、鮫島校長にオーダーメイドしてもらった。

 このデザインは結構悩んだ。なんせあんまり改良しすぎると、制服としてなりたたない。

 結果入学5日前に提出し、今日に間に合うよう急いで作ってもらった。

 これ位のワガママ聞いてもらわんと来た甲斐ない。



「寮の環境の事か? 一人部屋にしといて貰ったから別に問題はないぜ。

 飯が不味かったら自分で作りゃ良いし、デュエルは何処でも出来るだろう。

 それに所属で能力を評価するのは愚かだぜ?

 あと、教師を評価するのなら劣等生を演じた方がやりやすい。

 例えば寮ごとに贔屓する教師を見つけるのなら一発だ」

「……まぁ、貴方が良ければ、それで良いですが」



 さて、そろそろ入学式の時間か……サボるか。

 これは劣等生を演じているだけで、決してメンドクサイ訳じゃないのさ。



「んじゃ、そろそろ行くわ。まぁ、なんかあったら来るよ」

「はい。期待していますぞ」



 う〜ん……とりあえず学園内を見て回るか。






 ふむ、学園の施設は大雑把にだがわかった。

 次は島にある施設を見て回りたいが、時間がないな。

 とりあえず寮に行くか。なんとか一人部屋にしてもらったんだ。部屋の片付け位は今日中に終わらせたい。

 どうせ数日で汚くなるんだろうが、初日位は綺麗にしておこう。



「おっ! やっぱお前も受かってたのか!!」



 寮に行こうと学園を出たところで後ろから声をかけられた。

 振り向けば試験番号110番の男子と……誰だ?



「えっと……試験番号110番の男だよな? 確かアンティーク・ギア・ゴーレム使ったオカッパに勝ったよな?

 そっちはすまん、だれだ?」

「あぁ、そうだ。オレの名前は遊城 十代だ! 宜しくな!」

「僕は丸藤 翔ッス。宜しくッス。」

「俺は天馬 司だ。司でかまわんよ」

「オレも十代でかまわないぜ」

「僕も翔でかまわないッス」



 ふむ、十代に翔か。丸藤って、確かここで一番強い生徒の名字だよな? 偶然か?



「司もオシリス・レッドなのか? なんかオレ達と制服が違うけど?」

「俺は事情アリの入学でな、何処にでも入れたからレッドにしてもらったのさ。

 これは校長に言って浮いた食費とかで作ってもらったんだ。

 ブルーに入るよりかレッドのが安いからな」



 まぁ、間違ってもブルーには入らんけどな。イメージカラーが趣味に合わん。



「って事は、本当はオベリスク・ブルーに行けたって事ッスか!?」

「行かねぇよ。服の色が俺好みじゃない。イエローも俺には似合わん。

 俺に似合う色はこの学園にはレッドしかない」

「おっ! 気が合うな。オレも赤が大好きだぜ!

 燃える炎、熱い血潮、熱血のオレにはお似合いだぜ!!」

「ていうか、服の好みだけで選んだんッスか……」



 十代ほど赤が好きって訳じゃないが、黙っておくか。

 それと翔、服の選択は重要なポイントだ!!



「そういえば司君の事入学式で見かけなかったッスけど、遅刻ッスか?」

「いや、サボり。校内の施設を見てた。今から寮を見に行くつもりだ」

「オレ達も寮はまだ見てないんだ、一緒に行こうぜ」

「あぁ」



 そういや十代のやつ、『あの人』からハネクリボーを貰ってたな。

 早いとこ『あの人』との関係を聞きたいが、まぁ、後でだな。






「なんだこれぇ〜……オシリス・レッドの寮だけひどくない?」

「そうか? ここは眺めも良いし、風情もあるぞ!」



 十代に賛成だな。この眺めは良い。

 寮の前も適度に広く、デュエルするだけなら十分だろう。



「おい司、早速デュエルしようぜ!

 入試の時に見た、ライトロードだっけ? あれと早く戦いたいぜ!」

「あ〜……嬉しい誘いなんだが、部屋を片付けたいからまた今度で良いか?

 その代わりに学園でも見に行けよ? その年で迷子になんぞなったら笑いモンだぜ」

「しょうがねぇなぁ、明日までに終わらせておけよ!!」



 まぁ、部屋の片付けすぐ終わるだろう。

 パソコンとか設置するだけだし、夜にはデュエル出来るだろう。






 歓迎会も無事終わったんだが……あれが歓迎会の料理か。

 いや十代の言うとおり、確かに美味いんだが……自分で作った方が美味いな。

 明日から俺が作るか? しかしメンドくさいな……我慢するか。

 そんな事を考えながら十代達の部屋でマッタリしていた。

 初めて部屋に入った時にはコアラがいるかと思っちまったぜ。

 前田 隼人、去年からの留年生か。

 そりゃ引き籠ってたら留年するわな。

 しかし3人部屋か……レッドで1人部屋は結構なわがままだったかもしれん……。



「そういや十代、ハネクリボーは元気か?」

「ん? 相棒の事か?」

「その相棒が『あの人』から貰ったハネクリボーなら、そいつの事だ」



 あのハネクリボーのカードには精霊が宿っていた筈だ。

 関係が良好なら良い。

 相棒と呼んでる位だから大丈夫と思うがな。



「って、貰ってるとこ見てたのかよ」

「まぁな。しかし、相棒か……仲が良いみたいで少し安心したぞ」



 その様子じゃまだ精霊は見えてないか。

 感じ取ってはいるみたいだからすぐに見えるようになるだろ。



「あぁ……司ってあの人と知り合いなのか?」

「さぁな?」

「アニキ? さっきからあの人って誰の事っすか?」



 知り合いかどうか聞いてくるって事は、本当にあの時会っただけかな?

 『あの人』もたまたまぶつかっただけと言ってたし、十代は嘘とかつけなさそうだし。

 つまり『あの人』は直感で十代に力があると見抜いたわけか。流石だな。

 今はごまかしてみたが、本当は『あの人』とデュエルした事があるとコイツ等に言ったらどうなるんだ?


 …………メチャクチャ質問されそうだ。黙っていよう。



「さて、それじゃぁ腹も膨れた事だし、約束どおりデュエルするか?」

「おっ! 待ってました!」

「デュエルディスク持って降りて来いよ。どうせなら広い場所でやろうぜ」

「おうよ!」



 さて、現在の十代の力を見せてもらおうか。



「アニキも司君も初日からテンション高いッスね……」

「その元気、いつまでも持たないんだな」






 すっかり夜になって暗いが、デュエルするには十分だろ。

 観客は翔と大徳寺寮長の二人、おっとファラオとかいう猫もいたな。

 隼人は部屋で引き籠り。

 もったいない、見物するだけでも良い刺激になるぜ?



「それじゃ、始めようか」

「あぁ、全力で行こうぜ!」



 あぁ、あの試験官どもよりよっぽど楽しみだ。



「「デュエル!!」」

「先行は俺が貰うぜ! ドロー!」



 今回は先行で行かせて貰うか。

 まずは俺の流れを作り出させてもらうぜ。



「ライトロード・ウォーリアー ガロスを攻撃表示で召喚!」



 ライトロード・ウォーリアー ガロス(攻撃力1850)



「これがライトロードか! カッコイイじゃん!!」



 斧を構えた戦士を見てはしゃぐ十代。

 フフン、悪い気はせんな





「あれがウワサのライトロードにゃ?」

「先生も知らないッスか?」

「知らないのにゃ。初めて見るカードにゃ」





「更にカードを2枚セットしてターンエンドだ」

「よっしゃあ! オレのターンだ! ドロー!」



 さぁ、どこまで流れを呼び込むか見せてもらおうか。



「オレは魔法カード、融合を発動!

 E・HERO フェザーマンとE・HERO バーストレディを融合して

 マイ・フェイバリット・カード! E・HERO フレイム・ウィングマンを攻撃表示で特殊召喚!!」



 E・HERO フレイム・ウィングマン(攻撃力2100)


 いきなり来たな。赤い龍の腕も持つ戦士!

 流れが激しくなってきたのをビシビシと感じるぜ。



「行くぜ! フレイム・ウィングマンでガロスに攻撃!! フレイム・シュート!!」



 そんなガンガン来るスタイルは嫌いじゃないが、ここで流れを断つぜ。



「永続罠発動! ライトロード・バリア!」

「ライトロード・バリア?」

「オレの場のライトロードが攻撃対象になった時、デッキから2枚墓地に送る事で、その攻撃を無効にする!!」



 フレイム・ウィングマンからの攻撃をバリアで護る。

 いい攻撃だが、通す訳には行かないな。



「くっ、オレはカードを1枚セットしてターンエンドだ」

「残念だったな。俺のターン、ドロー!」



 さっき送ったカードがあれなら、行けるな。



「俺はライトロード・パラディン ジェインを攻撃表示で召喚!!」



 ライトロード・パラディン ジェイン(攻撃力1800)


 白い聖騎士が俺の場に現れる。

 今回も頼むぜ!



「ジェイン、相討ち狙いか!」



 あの入試を見てたのなら説明不要か。

 しかし、俺の狙いは相討ちなんかじゃないぜ!



「ジェインでフレイム・ウィングマンに攻撃! 輝士道一閃!!」





「攻撃力の低いジェインで攻撃? 何を考えてるにゃ?」

「先生は入試のデュエル見てなかったんッスね。

 ジェインは相手モンスターを攻撃する時、攻撃力が300ポイントアップするらしいッス」

「つまり相討ちって事にゃ?」





「そうはさせねぇぜ、罠発動! ヒーロ−バリア!

 俺の場にE・HEROが存在する場合、攻撃を1度だけ無効にする!」



 ジェインの振り下ろした一撃がフレイム・ウィングマンの前で止まる。

 流れを遮ったか。だが、まだ俺に流れはあるぜ。



「俺は手札からフィールド魔法、ジャスティス・ワールドを発動!」



 場が遺跡のような風景に変わる。

 雰囲気的には天空の聖域もこんな感じだったな。



「デッキから墓地にカードが送られる度にこのカードにシャインカウンターを1個置く。

 このカードは他のカードの効果によって破壊される時、シャインカウンターを2個取り除いて破壊を免れる。

 そして、フィールド上のライトロードはシャインカウンター1個につき攻撃力が100ポイントアップするぜ!」

「つまりライトロード・バリアを使う度に、ライトロードがパワーアップしちまうって事なのか?」



 ん? あぁ、そういえば十台にはライトロードの特性を言ってなかったな。

 入試の時も1ターンで決めたから見る事なかったしな。



「俺はエンドフェイズ時にジェインの効果を発動!

 さらにチェーンして罠発動! ライト・リサイレンス!

 このカードはライトロードと名の付くモンスターの効果でデッキのカードが墓地に送られる度に、

 相手のデッキのカードを上から1枚除外する。

 そしてジェインの効果で、自分のデッキの上から2枚墓地に送る!」

「何!?」



 まぁ、普通こんなデッキを削るカード思いつかないわな。

 そう思いながらデッキからカードを2枚墓地に送り、シャインカウンターが1個溜まる。

 さらにライトロード達の攻撃力も上がる。


 ライトロード・ウォーリアー ガロス(攻撃力1850→1950)

 ライトロード・パラディン ジェイン(攻撃力1800→1900)



「さぁ、十代。お前も1枚除外してもらおうか」

「くっ……」



 悔しがるにはまだ早いぜ。



「更にガロスの効果発動!」

「何!? さっきガロスは何も発動しなかったじゃないか?」

「ガロスの効果は、ガロス以外のライトロードと名の付くモンスターの効果によって、デッキのカードが墓地に送られた時に発動する。

 自分のデッキから2枚墓地に送り、墓地に送ったカードにライトロードと名の付くモンスターが居れば、その枚数分ドローする。

 勿論、この効果でもライト・リサイレンスの効果は発動するし、シャインカウンターも溜まるぜ!」

「くそぉ〜……」



 恨みがましい目線を向けるな。



「墓地に送ったカードにライトロード・ドルイド オルクスが居たから1枚ドローするぜ
 んじゃ、十代も1枚除外してくれ」

「わかってるよ」



 あの顔は何かしらキーカードが除外されたな。

 さらにシャインカウンターも溜まり、ガロスとジェインは攻撃力2000台になる。


 ライトロード・ウォーリアー ガロス(攻撃力1950→2050)

 ライトロード・パラディン ジェイン(攻撃力1900→2000)



「んじゃ、ターンエンドだ」



 俺の場には、ジェイン、ガロスの2人。

 しかもシャインカウンター2つのジャスティス・ワールドによって、2人とも攻撃力2000以上。

 更に守りのライトロード・バリアに、相手のカードを除外するライト・リサイレンス。

 十代の場には、2人よりも若干攻撃力の高いフレイム・ウィングマンのみ。

 手札はオレが3枚、十代が2枚。

 現在流れは俺に向いてきているぜ。


 さぁ、十代。ここからひっくり返してみろよ?



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あきゅろす。
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