[携帯モード] [URL送信]

遊戯王GX  −Selfish−
第1話 入学試験デュエル


「気の毒に……アカデミアの鉄の扉が閉じる音が、私には聞こえたわ」





「そいつはどうかな?」





 後ろから声が聞こえ振り返ると、見た事のない男が私と亮の後ろに立っていた。

 亮に目で聞いてみるが、彼も私同様に目の前の男を知らないようだ。


 男の背は亮よりも若干高く、黒のシャツに黒のジーンズ、深紅のロングコートを着ている。

 黒髪だが前髪に赤いメッシュが1本入っており、腰まである長い髪を後ろで1本に括っているようだ。

 見事に赤と黒のツートンカラー、肌の色位しか他の色が見当たらない。



「貴方誰? ここはデュエルアカデミアの生徒専用のフロアなんだけど?」


「そう固いこと言うなって、俺も近い内にここの生徒になるんだ。

 それよりも今は目の前のデュエルを見ようぜ。自己紹介なんて後でも出来るしよ」



 そう言って男は亮の隣に並ぶ。

 見た目から私達よりも年齢が上だと思っていたが、どうやら私と同い年のようだ。

 再びデュエルの方に目を向けると、フェザーマンが撃破されあの子のLPが残り2000になっていた。

 とてもじゃないけど、ここからあの子が逆転するヴィジョンが見えない。



「あの子には悪いけど、私にはここから逆転出来るなんて思えないわね」


「いや、逆だろ。今ので決められねぇんなら、もうあのオカッパにはムリだ」


「どうして? どう見てもあの110番の子のピンチでしょ」


「そうだな。あれはピンチって程じゃないが、劣勢だな」



 そう言って男は不敵に笑いあの子を見る。



「だが、あの目はピンチを楽しむ目だ。そんな奴があんなオカッパに負ける訳無いぜ」



 それから数ターン後、男の言ったとおりあの子はアンティーク・ギア・ゴーレムを撃破し逆転した。


 この時から私はクロノス教諭を倒したあの子と、勘とは言えこの結果を予想していたこの男に興味を持ち始めていた。








 第1話『入学試験デュエル』









「くらえ! スカイスクレイパー・シュート!!」



 そう叫びながら110番はアンティーク・ギア・ゴーレムを撃破し、勝った。

 さっきまで話してた金髪の女は110番の勝利を信じて無かったみたいだが、俺からしたらこれ位出来て当然。

 あのオカッパは110番を舐めきってたし、なにより110番は『あの人』からカードを受け取っている。

 110番の力はまだ荒っぽいようだが、それでも『あの人』に似たような力を感じた。



「まぁ、当然だろ」



 そう、この結末は当然だ。

 だと言うのに……。



「当然な訳無いじゃない。何とか勝てたようなものよ」


「だから、この結末は当然だって言ってんだろ。あれ位の相手ならこの結果は読めるぜ?」



 この金髪がやけに絡んでくる。

 さっさとどっか行った相方の男をちったぁ見習えよ。

 110番と話がしたかったんだが、まぁ、入学してからでも大丈夫だろ。アレなら筆記が悪くても十分合格レベル。

 例えオカッパが反対しても周りの奴と校長が入学を認めるだろうな。



「ハァ、まぁ良いわ。ところで貴方誰? あの子の知り合い?」



 普通ソレをまず聞かないか?

 まぁ、先にデュエルを見ようと言った俺が言える立場じゃないか。



「いや、あいつのことは、たまたまここに来る途中に知り合いと話してる所を見た位さ。


 それ以外は知らんよ」



 ちょうどハネクリボーをもらってる時だったな。

 あの人がカードをプレゼントする事なんて滅多にない。だから何故あのカードをやったのか聞いても『なんとなく』としか聞いてない。

 仕方ないから貰った本人から聞くつもりだったんだが、この女のせいで聞きそびれちまった。



「俺の名前は天馬 司だ。そういうあんたは?」


「私は天上院 明日香」


「天上院……。あぁ、中等部女子の中で1番強い生徒の名前が確かそんな名前だったな」


「まだ入学してもいないのに学園の事をよく知っているのね」


「自分が通う学校の事位調べるさ。まぁ、それでも軽くしか調べてねぇからそれほど詳しくないんだがな」



 実際今でもわざと落ちる事も考えてるんだが、わざと負けるのはなんか悔しいから勝つだろうな。

 特に相手を舐めきってるような奴、例えばさっきのオカッパみたいな奴だと絶対に勝つ。

 つぅか、そんな相手とデュエルしたくない。不快になるだけだ。



「真面目なのね。でも、試験に落ちちゃったら調べても意味無いんじゃないの?」


「それは無い」



『特別推薦枠 天馬 司君』



 ちょうど呼ばれたな。



「少なくとも、あんな試験官どもには絶対に負けねぇよ」



 そう言って俺はその場を飛び降りた。






 痛い。

 会場が目の前だからって飛び降りたのは失敗したな。少し高かったせいで流石に足が少し痺れる。

 そんなこと考えながら会場に向かうと、先に試験官のヒゲグラサンが待っていた。

 名前を聞いたわけじゃないから、別にこんな扱いで問題ないだろう。



「君が天馬 司君かい?」


「そうだ。あんたが試験官か?」



 ヒゲグラサンは首を縦に振る。

 口答しろよ。ムカつく野郎だな。

 流石にそんな事口には出して言わんが、俺の中でこいつの評価は下がる。



「では全力でかかってきなさい」


「その前にいいか?」



 早速始めようとするのは構わんが、確認しておきたいことがある。



「なんですか?」


「あんたのデュエルディスクにセットされたカードは、あんたの自分のデッキか? それとも試験用のデッキか?」


「試験用ですが、何か問題が?」



 だろうな。これは予想通り。



「なら自分のデッキに変えてくれないか? その方がやる気が出る」



 正直試験用のデッキなんぞ退屈以外なんでもない。さっきのオカッパが自分のデッキを使ってたんだから使えるだろ。



「悪いが今日は自分のデッキを置いてきてしまっている、だからその要望には応える事は出来ない」


 最悪だな。自分のデッキを持ってきていないだと?
 試験とはいえデュエルの場に自分のデッキを持ってこないだと?

 これなら、まださっきのオカッパのがマシだな。
 さっきから俺の中のあんたの評価は、すごい勢いで下がりっぱなしだよ。



「……そうか、じゃぁ、始めようか」


「「デュエル!!」」


「私のターン、ドローです!」



 先行はこいつに譲る。この1ターン、借り物のデッキでどこまで流れを作れるか見せてみろよ?



「ビッグ・シールド・ガードナーを守備表示で召喚!」



 ビッグ・シールド・ガードナー(守備力2600)



「ターンエンドです」



 デカイ盾を構えた髪の長いマッチョがやつの場に現れる。そこまではまだ良い。

 こいつ、人の事舐めてるのか?



「……それがあんたの全力か?」


「どういう事ですか?」


「そんなもんが全力だとしたら、こっちは興醒めだってこった!!」


「ッ!? そんな言葉は私に勝ってから言うのですね!!」



 あぁ、もぉ駄目だ。全ッ然! 駄目だ!

 言われなくてもこんな奴、速攻で終わらせてやる!!



「俺のターン! ドロー!!


 俺はライトロード・サモナー ルミナスを攻撃表示で召喚!!」



 ライトロード・サモナー ルミナス(攻撃力1000)


 俺の場に白い法衣を纏った女が現れる。どうせ後で説明するんだ、効果はまだ説明しなくても問題ないだろう。



「ライト・ロード?」



 そりゃ知らねぇだろうな。俺もこのカードの存在を知ったのはつい1週間前だ。



「さらに手札からライトロード・パラディン ジェインを捨ててソーラー・エクスチェンジを発動!!


 このカードは手札からライトロードと名のついたカードを捨てて発動する。


 デッキからカードを2枚ドローし、その後デッキの上から2枚墓地に送る」



 ドローしたカードと墓地に送られたカードを確認。イケる!



「墓地に送られたライトロード・ビースト ウォルフの効果発動!


 このカードは通常召喚出来ない代わりに、デッキから墓地に送られた時自分フィールド上に特殊召喚する」



 ライトロード・ビースト ウォルフ(攻撃力2100)



「ぼっ、墓地から特殊召喚!?」



 本来なら手札にあるおろかな埋葬で特殊召喚するつもりだったが、手間が省けたな。

 フィールド上のルミナスの隣に武装した白いワーウルフが場に現れる。

 こいつは血気盛んだからな。現れて早速ヒゲグラサンを威嚇し始めてやがる。



「まだだ! 手札を1枚捨ててライトロード・サモナー ルミナスの効果発動!!


 1ターンに1度手札を1枚捨てることで、墓地に居るレベル4以下のライトロードを特殊召喚する!!


 俺が呼んでくるのは、ライトロード・パラディン ジェイン!!


 来い! ライトロ−ド・リザレクション!!」


 俺の呼びかけにルミナスは魔方陣を組み、陣の中から現れるジェイン。

 中性的な顔立ちで、パッと見どっちかわからんが名前からして女だ。

 声も高く女間違い無しって言い切れたら良いんだが、正直男にも声の高いやつ位居るからなぁ……。

 まぁ、俺は女だと思っているけどな。

 因みにジェインの表示形式は、当然攻撃表示だ。


 ライトロード・パラディン ジェイン(攻撃力1800)



「1ターンで3体のモンスターを召喚するだと!?」


「バトルだ! ルミナスでビック・シールド・ガードナーに攻撃!」



 ルミナスが光球を生み出しビッグ・シールド・ガードナーに放つ。

 しかし、攻撃力の低いルミナスが敵う訳なくなく、俺のLPが大分削られるが問題無い。

(司 LP4000→2400)



「くっ……ビッグ・シールド・ガードナーの効果発動。攻撃を受けたこのカードはダメージステップ終了時攻撃表示になる」



 ビッグ・シールド・ガードナー(攻撃力100)


 何故なら、こいつはその後もっとダメージを喰らうからな。



「続いてジェインでビッグ・シールド・ガードナーに攻撃! 輝士道一閃!!」



 ジェインの振り下ろした剣が、ビッグ・シールド・ガードナーの体を真っ二つに裂かんと迫る。



「この時、ジェインの効果発動!!


 このカードが相手モンスターに攻撃する時、ダメージステップの間、攻撃力が300ポイントアップする!!」



 ライトロード・パラディン ジェイン(攻撃力1800→2100)



「なんですと!?」



 真っ二つにされるビッグ・シールド・ガードナー、その結果ヒゲグラサンのLPは大幅に削られる。

(試験官 LP4000→2000)



「これで終わりだ!


 ウォルフでプレイヤーにダイレクトアタック! シャイニングスラッシュ!!」



 ウォルフの振り下ろした爪がヒゲグラサンを引き裂きLPを0にする。

(試験官 LP2000→0)

 流石にソリッドヴィジョンで死ぬことは無いが、色々とダメージがあるようで呆然としている。

 1ターンキルもしてやったしな。



「パーフェクト・ゲームだ!!


 あんたの敗因は、人の事を舐めきってた事だ。出直して来な!!」



 ヒゲグラサンに指を突きつけて会場を後にする。

 そういや周りが静かだったな。





[次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!