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遊戯王GX  −Selfish−
第4話 月一試験 A


「次デュエルする時までに、俺は絶対に強くなってやる!!

 だから、今度デュエルする時は絶対に勝ってやるからな!!」



 背後から司の宣誓が聞こえる。



(えぇ、楽しみにしていますよ)



 声には出しませんが、司の宣誓に答える。


 今夜のデュエルは本当に良かった。

 1ターンを超えただけじゃない。1ターン超えるだけなら、2度目のデュエルで超えた者は何人か居た。防御に専念すれば良いだけの話だ。

 ダメージを受けない、攻撃させない等防御だけなら幾らでも方法があるだろう。

 可能性は低いが、僕に1ターンキルを狙えば勝てるだろう。

 だが今まで見た事無いカードを使い、大罪の悪魔を見て折れない闘争心を見せてくれたのは武藤 遊戯以外では初めてだった。

 兄貴が居なければ、ここには来ないで世界を旅するつもりだったけど、来て良かった。





 これで僕の目的にまた一歩近づいた。








 第4話『月一試験』








「お願いしますぅ、デュエルの神様!」

「……おい」

「今日の月一テストの成績次第で、このオシリス・レッドからラー・イエローに昇格する事ができます」

「…………おい」

「これはまさに、死者蘇生!」

「ハァ……」



 永遠とのデュエルから数日。大した出来事も無く、月に一度の試験日になった。

 正直かったるいにも程があったが、実技もある訳だから一応参加しておく事にした。


 のだが……。



「翔、朝っぱらから何やってんだ?」

「あっ、司君。おはようッス」

「おぅ、おはよう。

 んで? これはなんの儀式なんだ?」



 正直キモい。

 と言うか、月一試験如きに必死になり過ぎだ。



「だって、この試験の結果次第でラー・イエローに上がれるッスよ!! 必死になるのは当たり前ッス!!」

「なんでそうなるのかねぇ……」

「司君やアニキは強いから分からないんッスよ」

「いやそういう事じゃなくってだな……俺等レッドには負けても下がる所が無いんだぞ?」



 退学って可能性があるにはあるが、よっぽどの事が無い限り低いだろ。



「逆にブルーやイエローは降格の可能性がある分プレッシャーがかかってる。

 だから肩の力抜けよ? 負けても現状維持なんだぜ?」

「司君……」



 これでちったぁ緊張もほぐれるだろ。

 少し位緊張感を残した方が良い結果が生まれるんだが、翔の場合は緊張しすぎだ。



 『ジリリリリリリリリリッ!!』


「うわぁっ!!?」

「んで、こいつは緊張感の欠片も無い訳だ」



 こんな真横で目覚ましが鳴ってんのに起きないとは……呆れを通り越して感心するよ。



「アニキィ、テストに遅れちゃうよ? アニキ!」

「ぉれのたぁん…どろぉ!」



 まぁ、十代が緊張してる方が珍しいか。



「俺は先に行ってるぞ?」

「えっ!? でもアニキはどうするのさ?」

「同室の翔に任せる!」

「見捨てられた!!?」



 翔、強く生きろよ。





「う〜ん……困りましたねぇ」

「どうかしたのか?」



 学校に到着するやいなや購買の売り子が唸ってた。

 いつもなら素通りするんだが、レディが困ってるのなら助けないとな。



「貴方、生徒さんね?」

「あぁ、天馬 司って者さ。あんたは購買の売り子だよな?

 なんか唸ってたけど困り事か?」

「えぇ…でも生徒に手伝って貰う訳には……それに今日は月一テストでしょ?」

「なぁに、テストなんかよりも困った女性は助ける方が有意義さ。手伝える事なら言ってくれよ?」

「そうですかぁ?」



 無理強いしすぎか?

 だが、手伝ってやりたい気持ちがある。テストやるよりかは、レディを助けた方が断然やる気が出るってもんだ。



「じゃぁ、天馬君。少しだけ店内の整理だけ頼んでも良いかしら?」

「お安いご用だ。あと、気安く司で良いぜ?」

「フフフ。じゃぁ、よろしくお願いするわね。司君」





「ありがとう♪ とっても助かったわ♪」

「どういたしまして。こんな作業いつもやってるのか?」

「う〜ん……いつもはトメさんとお店の準備してるんですけど……今日はいつもの時間になっても来なかったの。

 たまにこういうトラブルで遅れちゃう日があって、そういう日はとっても大変なの

 今日は司君のおかげですっごく助かったわ♪」

「トメさん?」



 きっと同じ店員なんだろうが……名前がすげぇ古臭い。

 名前だけで判断するなら、かなりのバアさんだな。



「二人だけでここを回してるのか?」

「はい」



 すごいな……次のレポートで店員の増員を提案してみるかな?



「それじゃぁ、そろそろ行くわ。

 今度は買い物客として来るぜ」

「えぇ、楽しみにしてるわ♪」





「んで、お前らは寝て筆記を棒に振ったと?」

「やっちまった……なんのために、勉強したんだか……」

「気にすんな。午後の実技テストが本番よ」



 筆記試験終了のアナウンスを聞き教室に入ると、机で爆睡している二人とそれを起こす生徒一人を発見。



「十代はともかく、翔はあれだけやる気を(変な方向に)出しながら寝るとかありえんだろ?」

「終わったッス〜……」

「まぁ、イイじゃねぇか? 終わった事をクヨクヨ悩んだって仕方ないさ」

「まぁ、筆記を丸々サボった俺が言える立場じゃないし、俺の事じゃないからそこまで気にはしてないが……」

「何気にヒドイッスね……」



 いや、ヒドイじゃなくて当たり前の事だろ?



「あれ? みんなは?」

「もう昼飯か?」

「購買部さ。なんせ、昼休みに新しいカードを大量入荷することになってるからな」

「えっえぇぇっ!? カードの大量入荷!?」



 購買部か……だから今朝は忙しかったのか?

 ところで、説明してくれたコイツ誰?



「皆午後の実技テストにむけて、デッキを補強しようと買いに行ったんだよ」

「え? 三沢君は?」



 あぁ、三沢ね。

 どこかで見た事あると思ったら、入試デュエルで話題になってたな。

 確か、筆記はナンバー1だっけ?



「僕は今のデッキを信頼している。新しいカードなんか必要ない」



 大した自信だな。

 確かに、今新しいカードを手に入れてもデッキに組み込めるかどうかわからんからな。

 補強が出来るかもしれないが、デッキはやはり使ってみてどうなるか試してみたい。

 まぁ、1〜3枚位なら速攻で組み込む事も可能か。



「司君は?」

「そこまで興味はねぇな。まぁ、購買部には興味あるが」

「アニキは?」

「オレは、興味ある!!

 どんなカードがあんのか見たくってしょうがねぇ!!

 行こうぜ!! 翔!!」

「うん!!」



 呼び止める間もなく走っていきやがった。

 せわしない奴らだな。



「君は天馬 司君かい?」

「ん? あぁ、そうだ。えっと……三沢だっけ?

 すまねぇが、下の名前までは覚えてないんだわ」

「いや、かまわないよ。こうして面と向かって話すのは初めてだからね。

 三沢 大地だ。よろしく」

「天馬 司だ。司って呼んでくれ」

「あぁ、わかったよ司。僕の事は好きに呼んでくれ」



 なかなかの好青年じゃねぇか。



「入試デュエルの1ターンキルをよく覚えているよ。

 僕もあの教官が入試の相手だったから、司の凄さはよくわかってるつもりさ

 なのにどうしてレッドなのか分からないよ。それに制服も普通のレッドの制服とは違う」

「まぁ、訳アリって奴さ。

 悪いが、もっと話して居たい所なんだが俺も購買に行きたいんで、これ位で良いか?」

「あぁ。呼び止めて悪かったね。また今度話そう」

「おぅ」



 中々面白い奴だ。それに、強いな。まぁ、主席入学は伊達じゃないって事か。

 さて、購買に行くか。





「なんだ? 1パックずつしか買えなかったのか?」

「あっ、司君」

「あっちゃ〜……司の分忘れてたな」



 つまりもう無いって事か。

 まぁ、パックなんかよりも昼飯のが欲しかったから構わないがな。



「いらっしゃい♪」

「今朝振り、昼飯ある?」

「あら? 新しいカードは良いの?」

「そうだなぁ……あれば嬉しいが、今は昼飯のが欲しいな」

「わかりました♪」



 そう言って奥に在庫を見に行った。



「司君、本当に新しいカードいらないんッスか?」

「いらないとは言ってないぜ? だが、無いもん強請っても仕方ないだろ?

 それよりも午後の試験に間に合うようにデッキを組まなくて良いのか?」

「そぉだった! 悪い、司! 先に行ってるぜ! 行こうぜ、翔!!」

「あ!? 待ってよ、アニキ!!」



 ほんとにあわただしい奴らだ。

 なんて考えてると中年のオバちゃん店員が声をかけてきた。



「アンタが今日セイコちゃんを手伝ってくれた子かい?」

「セイコちゃん……もう一人の店員か?」

「そうそう。とっても助かったって言ってたよ」

「ハハ、テストをサボる口実にしただけかもしれないぜ?」

「それでもさ。アンタが手伝ってくれたおかげで助かった事には違いないんだ。あたしからも礼を言うよ」

「律儀なオバちゃんだな。じゃぁ、ありがたく受け取っとくよ」

「フフフ。オバちゃんじゃなくって、トメって呼んでおくれよ」

「トメさんか。じゃぁ、俺は司って呼んでくれ」

「あいよ。司ちゃんだね♪」



 司ちゃんって……勘弁してくれよ……。

 だがまぁ、テストの度に手伝うのもアリだな。

 月一試験とかメンドクサイし、期末とか受けときゃ成績は問題ないだろ。



「おまたせしましたぁ♪」

「おぅ。悪いな、わざわざ奥まで行ってもらって」

「いえいえ。今日のドローパンの残りですけど……良かったですか?」



 ドローパン? たしか、どの味が出るのか分からないってパンだったよな?



「あぁ。2個買うぜ」

「おや? あんたは新しいカードを買いに来た訳じゃないのかい?」

「あれば買うんだが、無いんだろ?」

「ありますよ♪」

「何ッ!?」



 十代達の様子じゃもう無いと思ってたが、まだあったのか?



「ありゃ? 十代ちゃん達ので終わりじゃなかったのかい?」

「今朝のお礼にと思って、取っておいたんですよ♪」

「そっか、ありがとうな。かなり嬉しいぜ!」



 まさにサプライズってやつだな。

 思えば無いと思ってたモノが、突然あったらかなり嬉しいもんだ。



「私、セイコって言います」

「俺は司って名さ。これからよろしくな」



 握手しながら時計を見ると、結構ギリギリな時間。

 昼飯は歩きながら食うか。



「んじゃ、時間が無いから行くわ。また今度来るぜ!」

「また来てくださいね♪」





「万丈目!!」



 俺がデュエル場に着いた時には、十代と万丈目のデュエルの終盤だった。

 新しいカードの効果がデッキに合うか考えながらドローパンを食ってたら、いつの間にか時間がだいぶ過ぎてしまってたな。



「これでお互いライフは1000ポイントずつ!

 でも、ここでオレが攻撃力1000以上のモンスターを引いたら面白いよな!!」

「何を戯言を! そう簡単に!!」

「でも、引いたら面白いよな!! オレのターン! ドロー!!」



 このデュエル、十代の勝ちだな。

 この状況は明らかに十代の流れ。万丈目の逆転は無い。



「オレはこのカード、フェザーマンを召喚し、プレイヤーにダイレクトアタック!!」

「うわあぁぁぁぁっ!?」



(万丈目 LP1000→0)



「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!!」



 まぁ、予想通りの結果だな。

 つまり、事実上遊城兄弟はこの学年でトップクラスって訳だ。

 中々良いタイミングで入学できたと再認識したぜ。

 というか、これ位のレベルなら別に俺要らないんじゃね?



「見せてもらいましたよ、遊城 十代君。

 君のデッキへの信頼感、モンスターとの熱い友情、そしてなにより勝負を捨てないデュエル魂。それはここに居る全ての人が認めるでしょう。

 よって、勝者遊城君、君はラー・イエローへ昇格です」



 昇格ねぇ……十代の奴レッドが気に入ってるって言ってたから、行く気無いんじゃないか?

 と言うか、この昇格システム一度見直した方が良いんじゃないか?

 成績不遇者=レッドって結構やる気が無くなるぜ?



「おっ! 司!! 俺のデュエル見てたか!!」

「今来た所だからそこまで見てないな。

 ただし、勝った所は見たぜ。それに昇格したとも聞いたぜ。おめでと」

「次は司に勝ってやるからな!」



 テンション高いな。

 いや、いつもの十代のテンションだったな。



「さて、次は俺の番だな。さっさと勝ってくるぜ!」

「おう! って、翔も次なんだけど、もしかして司が対戦相手か?」

「知らんよ。まぁ、相手が誰でも俺のデュエルを押し通すだけさ」



 さぁて、対戦相手は誰かな?





 はぁ?



「何? 私が相手じゃ不満なの?」

「いや、そういう事じゃないんだが……なんで?」



 デュエルの相手はなんと明日香。

 十代が万丈目とデュエルしたから、あり得ない相手じゃねぇんだが……。



「誰かが仕組みやがったのか?」

「私が申し出たのよ」



 お前かよ!!



「なんで俺の相手を?」

「以前貴方は私とのデュエルを蹴ってデートに行ったわね。かなり屈辱的だったのよ?」

「はぁ……そんな理由かよ?

 それに俺も言ったはずだぜ? 貴方なんて呼ばずに司って呼んでくれって」



 しっかし、なんつう理由だ。

 気が強いのも大概にしてくれ……。



「貴方がどう言おうと、このデュエルは決定よ。大人しく私とデュエルなさい!」

「やらねぇとは言ってないぜ?

 もっと違う形でデュエルしたかったんだがなぁ……まぁ、イイ女の頼みは断れねぇしな」



 うだうだ言っても仕方ねぇか。

 明日香は女子の中でトップクラスのデュエリストだった筈、なら女子のレベルが分かると思えば良いだろう。



「それじゃ、始めるか?」

「えぇ」

「「デュエル!!」」



 さぁ、イクぜ?





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