小説2 衣替え 目の前でばたばたする隼人を見ながら、シャマルの思考もくるくると変化する。 (良い眺めだな〜) と、いやらしく笑ったり…… (隼人も大きくなったな〜) と、まるで親の様に感慨深く頷いたり…… (やっぱ、まだまだガキだな〜) と、苦笑したり…… (つーか、こんなに有るのか!?) と、呆れてみたり…… 今、シャマルの前では《衣替え》と言う名の、プチ・ファッションショーが繰り広げられている。 惜しげも無く素肌を晒し、次々に服に袖を通しては脱ぐの繰返し。 「くそっ!これも駄目か!」 お気に入りの洋服が小さくなって、悔しそうな言葉を吐く。 だが。言葉の割に、その顔にはいつもの不機嫌そうな色も、眉間の皺も無い。 むしろ、嬉しげだ。 洋服が小さくなった=成長の証。 そんな様子を見て、シャマルは湧き上がる笑いを噛み殺す。 機嫌を損ねて、この洋服の山を放置して怒り狂われては堪らない。 (しっかし、どんだけ有るんだ?) 洋服、アクセサリー等に拘りの有る隼人が、衣装持ちなのは知っているが…… 隼人の自宅なら、何の疑問も無い。 しかし、ここはシャマルの家。 普段の入り浸り具合―――というか、もはや住んでいる状態だが―――を考えれば、この量も不思議では無いが…… 改めて、一緒にいる時間の多さを実感する。 夕暮れ。 成長期真っ只中の隼人の衣類は、大半が破棄の処分に決定。 大きくなった証とはいえ、激減した服の量に眉を顰める隼人。 その様子に、シャマルは予感する。 (来週の予定は、決まったな) かなりの確立で、来週末は買い物に付き合わされるだろうという、予感。 勿論、荷物持ちの為のドライバーとして…… END [*前へ][次へ#] |