小説2 癒し 勝手知ったるシャマルの家で、指定席であるソファーの真ん中に座り、だらだらテレビを見ている。 玄関から物音が聞こえ、家主の帰宅を知る。 「おかえり」 声を掛ければ、ジャケットを脱ぎながらこちらに直進。 脱いだジャケットをソファーの端に投げ、その上にネクタイを放る。 ワイシャツのボタンを胸元迄外して、完全に寛ぐ姿勢。 『ただいま』も言わずに、無言で行われる行動。 最後に、ソファーに座っていた獄寺をひょいっと持ち上げ、居場所を奪って座ると、その膝の上に乗せて抱き抱える。 「おいっ!」 咎める声。 前半の行動は、どうでも良い。 ジャケットやネクタイが皺になろうが、獄寺には知った事では無い。 後半の行動―――膝に乗せられた事―――と、『おかえり』と声を掛けたのに、『ただいま』と返さないのは気に入らない。 「離せっ!」 がっちり胴に絡む腕を、爪を立てて引き剥がそうとするが、離れる気配は無い。 (むかつく!) 力が敵わない事に、眉間に不機嫌な皺を深く刻む。 「シャマルっ!離せっ!」 「あ〜……、嫌だ」 「ぁあ!」 不機嫌さが最高潮に達する。 『だってよ〜』と獄寺を抱えたまま、更にアッシュグレイの頭に顎を乗せる。 「今週、すげ〜忙しくてさ〜。超〜、疲れちゃってんだもん」 「それと、この状態と、何の関係が有るんだよ!」 抱き枕状態に、不満を漏らし続ける。 「癒されたいの!」 (………) 「はあ!?」 『癒されたいだあ!?』と、それ迄の不満を吹っ飛ばして、シャマルの発した言葉を繰り返す。 「そ〜なの。だから、大人しく抱かれてろよ」 (この状態の、何が癒しなんだ?) 首を傾げたいが、頭に顎が乗っかっていて思う様に動けない。 「なあ、どの辺が癒しなんだよ?」 「ん〜、全部?」 「疑問型かよ!」 問い掛けに返る返答は、明確な内容では無くて、呆れる。 END シャマル先生の癒しは、隼人君といちゃいちゃする事。 でも、ご機嫌な時も、暇な時もいちゃいちゃ…… [*前へ][次へ#] |