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小説2
変わらない日々(10年後設定)
破壊の跡が残る建物。
傷を負った黒スーツの男達。
火薬や埃、血の臭いが混ざり合うなかで、うんざりと表情を歪めるシャマル。
「男は診ない主義だっつ〜のに」
がりがりと頭を掻きながら、やる気の無い動作で医療器具を広げていく。
「男なんか、唾でも付けとけばいいのによ〜」
「ぐだぐだ言ってねーで、仕事しろよ!シャマル」
嘆きの呟きを零し続けるシャマルに、鋭く声が飛ぶ。
緩慢な動作で頭を上げ、眠たげな半眼が捉えたのは、黒のスーツを隙無く着こなした青年。
怪我を負い、血や埃に汚れたスーツの男達の群れの間を―――髪一筋乱れていない姿で―――悠々とした足取りですり抜けて来る。
「『俺の仕事』って訳でもね〜し。俺、ボンゴレの人間じゃね〜しなぁ?」
やる気の無い理由を述べ立ててみるが、通用する気配は無い。
『とっとと働け』と促され、とりあえず1番重傷な男を相手に治療を開始する。
「で?片付けたのか?」
「適当に相手して、逃した」
(襲撃者達を泳がして、後日、首謀組織に相応の措置を取る……か)
ボンゴレ支部を襲撃した奴等の不運は、隼人の存在か。
怪我人の人数を見れば、成功する筈だった襲撃計画―――たまたまのオフに、偶然近くにいた隼人が現れなければ。
折角のオフのデート中、なし崩し的に巻き込まれた自分。
襲撃を計画したどこぞの組織と、巻き込まれた自分。
(どっちが、より不運なんだろうな?)
色っぽい展開を期待したデートから一転、野郎を診る羽目になっている現状を考えると……
(やっぱ、不運は俺だな)
結論を導き出しつつ、次々と処置をこなしていく。





「医療班が到着しましたっ」
御役御免を告げる言葉と共に、白衣姿の一団が現れる。
漸く、《男相手の治療》という苦痛から解放されたシャマルは、脱ぎ捨てていたジャケットを片手に建物を後にする。





車に寄り掛り、煙草を咥えて腕の時計を見る。
(30分、だな)
タイムリミットを設定し、煙を吐き出す。
今日の不運の、末路迄のカウントダウン―――30分待って隼人が戻らなければ、休日返上したと考えデートは終了。
(振り回されっぱなしだな)
10年―――下手すれば、それ以上。
2本目の煙草を咥え、思い出す―――10年前、『獄寺達に傷を作ったから、治療しに来い』と、傷を与えた者からの横柄な要請が―――始まりの記憶。
唯一例外の隼人と、イレギュラーだった件―――リボーンの要請と、同情心で治療した綱吉。自分が発病させた雲雀への、処方―――以外で、始めて野郎共の治療をする羽目になった、あの《アルコバレーノの試練》から、自分の不運は始まったとシャマルは思う。
それ以降も、何かと駆り出され―――隼人を押さえられている以上、結局手を貸す羽目になって。
当時は、リボーンから。
現在は、年々師に似てきた綱吉から引っ張り出されている。
(ヘタレ小僧だったくせに、嫌な部分ばっか似てきやがって)
2本目の煙草を靴底で揉み消し、表情を歪ませる。
だが、問題の根本は結局ひとりの存在なのだ。
視線の先で、銀の髪を靡かせ、こちらに向かってくる青年。
昔は無自覚に。
現在は、自覚たっぷりに自分を振り回してくれる隼人が近付いて来る。
(23分)
タイムリミットの時間を残して、戻って来た隼人。
(とりあえず、今日の不運はここ迄か)
自分の運を左右する青年は、『待たせたな』のたった一言で、今日の厄介事を片付けた。





「予約時間、間に合うよな?」
久し振りに戦闘で暴れて、『腹減った』と騒ぎ始めた隼人。
思えば、飯の無心をするのも『10年前から変わらないな〜』と、改めて気付く。
「言っとくけど、お前の奢りだからな」
「はっ!?何でだよ!」
「『何で』ってお前……」
十分過ぎる程に稼いでいるくせに、何故そこ迄嫌そうにするんだか……
「『飯食いに行こう』って言い出したのはシャマルだろ!」
『だから、当然シャマルの奢りだ』と、助手席でふん反り返る隼人。
「デート中に仕事入れて、巻き込んだ」
『慰謝料って事で、隼人の奢り』
多少の罪悪感が有ったのか、不満気な態度は変えないながらも、《デート中断の詫び》として妥当か、吟味する様に考え込む隼人。
たかだか食事代くらいの出費、たいした問題では無いのに真剣に考えるその姿。
「あ〜。んじゃ、飯は予定通り奢ってやるよ」
「……?」
軽快に走る車。
(レストランの予約時間迄に、ちゃんと間に合いそうだな)
余計な出来事は有ったが、予定に大きな狂いは無い。
『奢ってやる』の一言に、喜ぶどころか訝しげに眉を顰めるのを横目にちらりと見る。
「慰謝料は、食事の後にたっぷりサービスしてくれれば良いから」
「食事の後?……っ!!」
言葉の意味が脳に伝わった瞬間、『変態!エロ医者!』と、10年前から吐かれ続けている悪態が溢れ出す。





今も昔も―――振り回されて、面倒を持込まれ、厄介事に巻き込まれて。
小さな不運を与え、大きな幸運をくれる。





《後書き》

アニリボで、シャマル先生と隼人君が絡んだ!
(折角シャマル先生出たのに、すれ違いじゃんっっ(〃_ _)σ‖と、焦らされた日々)
やった〜ヽ('ー'#)/という事で、アニリボからの妄想ネタです!


ただ、放送からえらく時間が経ってからの更新となってしまいました……
||(-_-;)|||あう〜〜


遅くはなってしまいましたが、『祭だ〜!』と楽しく妄想して幸せでした♪♪♪


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