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小説2
拍手(2009.4月)



桜の樹の下



「何、くっ付けて来てんだ」
アッシュグレイの髪に、一枚のピンクの花弁。
摘んで、頭の高さから落とすと、ひらりひらりと舞いながら床に落ちた。
「桜がピンク色の理由、知ってるか?」
碧の瞳が、悪戯に笑いながら聞いてくる。
「さあ?何でだ?」
元々そういう色なのだろうと思いながら、暇潰しの話題に乗ってやる。



「桜は、血を吸うからなんだって」
「はあ?」
(吸血樹かよ?)
「桜の樹の下には、死体が埋まってんの」
「……何処で聞いてくるんだ、んな話し……」
なんとも、ブラックな説だ。
「並中には、いっぱい埋まってんじゃねーの?」
何かを含んだ様な、言い方。
「雲雀だよ」
「あ?」
「雲雀が『桜の樹の下には死体が埋まってるから、紅い血を吸ってピンクに染まる』って言ってた」



はあ……と、溜め息を吐く。
(これは……バレてるな)
「『保健医が現れてから、色が強くなった』だって」
そんな御伽話しだか、怪談話し……―――信じている訳では無いのだろうが、真実には辿り着いている。
(暴れん坊主ね〜)
いつの間に、仲良くなったんだか……
「ボンゴレ坊主と、野球坊主は気付いてんのか?」
そこ迄のヘマ、した覚えは無いが……
『失礼な呼び方、いい加減止めろよ』と眉間に皺を刻みながら、首を振る。
「お前は?いつ気付いた?」
「なんとなく」
保健室の窓から外を眺め、面白そうに笑う。
(人の落ち度を見て笑うなんて、ろくな成長しなかったな)
「空気が、たまに変わる気がした」
(勘の良い奴だな〜)
「暴れん坊主は?」
「んー……、似た様なとこ」
『獲物の気配がしたら、保健医に先を越された』と、不満気に言っていたらしい……



ふたり共、確証は無いという事か……



自分の腕が、鈍ったか……
命をはって、イタリアの裏の街を生き抜いた経験の賜物か……
暴れん坊主は、天性の腕の良さの付加価値か……


「校内で始末する様な、んなヘマしてね〜よ」
適当に誤魔化しても良かったが、真実に辿り着いたご褒美に肯定してやった。



隼人の言う通り、時折もうひとつの仕事―――ボンゴレ坊主の暗殺を企む刺客の始末―――をしていた。
隼人達、守護者連中では手に余る様な者。
必要性―――効果的な成長を促進する敵―――の無い者。
『そういうのは、お前が始末しろ』
リボーン―――ボンゴレ―――からの、任務依頼だった。



(わざわざ学校外で片付けていたのにな〜)
人の苦労を無にしてくれる。
「雲雀が、『獲物取るの止めてよね』だって」
「はいはい」
端から、暴れん坊主で済むのには手を出して無いっつ〜の。
《任務》でも、手段迄は指示されていない。
面倒が嫌いなシャマルは、楽して任務を遂行する事に余念が無いのだから……



しかし……
(隼人狙いの敵が居た事には、気付いて無い様だな……)
バレてたら、こんな風に機嫌良く、揚げ足を取る様な会話をしていないだろう。
『余計な真似すんな!』と、大騒ぎする筈。
(《スモーキンボム》も、結構人気者だね〜)
過去の暴れっぷりが、想像出来てしまう。



任務は《ボンゴレ10代目候補》の暗殺阻止だが、《スモーキンボム》への報復阻止も兼ねるシャマルだった。



END


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